桜の季節になると
お師匠先生の事を思い出します。

母に勧められて13歳から実家の近くで
茶道と華道を習っていたのですが、
大学進学で三重を離れるまでの6年間
学校帰りにせっせと制服姿で通い続ける事ができたのは
ひとえに師匠である小林先生のお人柄のおかげでした。

優しくていつもニコニコしていたお師匠先生。
昔お子さんが使っていたという一軒家を教室にして
一人で指導をしていらっしゃいました。
十数名のお弟子さんの中で中学1年の私は最年少。

毎週金曜日はカバンにお稽古道具
入れて登校して
学校帰りにそのまま教室へ。
2間続きの和室の片方に炉が切ってあって
最初にこちらでお茶のお稽古。
それが終わると隣に移動してお華のお稽古。

最初は親に言われて仕方なく始めたお稽古でしたが
なんとなくでも続けていくうちに少しずつ楽しくなってきて
稽古場に来るとほっとするようになりました。

学校で色々あって悩んでいる時も
稽古場に来れば周りは自分よりもだいぶ大人の方ばかりで
優しく大らかに接してくれる。
そういう空間がある事に思春期の私はかなり救われました。

ある日のお稽古でお花が桜だった事がありました。
桜の花は好きですが、私の苦手な枝ものです。

枝ものの矯め(ため:曲げること)が不得手で
よく圧し折ってしまっていたんですよね…松とかも苦手でした。

とりあえず何とか型どおりに生けたのですが
先生に見ていただくと案の定、全部剣山から抜かれてしまい(笑)
その後先生の手によって生け直された桜がびっくりするほど美しくて
いつもならお稽古後に体・用・留の場所だけメモに書いて帰っていたのですが
その日はその桜の絵を描いて帰ったのを覚えています。
苦手な枝ものが少し好きになった瞬間でした。

それから毎年、お稽古のお花で四季の移ろいを感じながら
桜の絵が6枚になった時です。
高校卒業と同時に師範の資格を頂けることになりました。

この時に生け花用の名前を付けるのですが
○○斎 奈生甫

先生はこの○○斎の部分を
「自分で考えてきてくださいね」と仰って下さって
めちゃめちゃ悩みました。

1週間くらい母とも相談しながら最終的に

桜華斎 奈甫

にきめました。おうかさいなほ、と読みます。

自分が桜の咲く季節に生まれたこと
先生の生ける桜が好きだったこと
あとなんか響きがかわいい。

ちなみに下は慣例に沿えば「奈生甫」になる予定だったのですが
なんとなく語呂が悪い気がして「奈甫」にしていただきました。

ちょっとキラキラしすぎてるかな…
と思っていたのですが先生は
「若いうちはこれくらい華やかでなくっちゃ!」
「可愛くて綺麗な名前ですよ」
と褒めてくれました。

卒業後何度か手紙のやり取りをしましたが
途切れてしまい、教室も数年後に閉じられました。
あれからもう10年以上が経ちますが
毎年桜の咲く季節になるとこの事を思い出します。


実家にまだ当時のメモ帳は残ってるかなぁ。
次に帰省した時には、久しぶりに水盤をだしてお花を活けてみようかな。

今日で3月が終わり、明日から新年度。
ちょっと懐かしい桜の思い出話でした。