待望のCPI
10日発表の米10月消費者物価指数(CPI)の前月比が事前予想(+0.6%)を下回り、期待通り前月(9月)並みの+0.4%にとどまりました。その結果、DOWが1201ドル(3.70%)高の33715ドルと、前日の大幅下落(1.95%安)分の2倍近く取り戻し、直前の最高値(8月16日の34281ドル)に迫りました。米10月消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に鈍化したことで、FRBが利上げペースを減速する(*1) との思惑が強まり、4.10%程度で推移していた米10年債利回りが3.82%台まで急低下したため、高PER銘柄の相対的な割高感が薄れたハイテク株を中心に買い戻しが加速し、ドル安が米企業の収益回復に繋がるとの期待も強まり、相場を一段と押し上げたようです。(*1)12月FOMCでの利上げが0.50%に落ち着く可能性が増大しました。ナスダック総合指数も7.35%高と急反発したことを受けて、週末の日経平均は422円(1.54%)高で寄り付いた後も、売り方の買い戻しを巻き込みながらトレンドフォロー型ファンドの買いで上値を伸ばし、前場中ごろには883円(3.22%)高の28329円と、5日線(27765円)や+2σ(28147円)を軽々と抜き、節目の28500円に迫りました。そこまで行けば、さすがに短期的な過熱感から戻り待ちの売りなども入り、前引けにかけては騰勢一服となり、11日の日経平均は817円(2.98%)高の28263円で引けました。フィラデルフィア半導体株(SOX)指数が+10%と大幅高となったことを追い風に、半導体関連が軒並み高となりました。レーザーテック<6920>が16.0%高と急騰したほか、業績予想を下方修正した東京エレクトロン(8035)ですらも地合い好転を背景に8.4%高と急伸し、アドバンテスト(6857)は国内証券によるレーティング格上げも手伝い9.1%高、ディスコ(6146)は6.5%高と上場来高値を更新したほか、ソニーG(6758)が5.5%高、キーエンス(6861)が6.3%高、村田製作所(6981)が5.9%高になるなど主力ハイテク株のほか、太陽誘電(6976)が7.5%高、イビデン(4062)が7.9%高、安川電機(6506)が7.8%高になるなど、グロース株が軒並み急伸しました。資生堂(4911)が10.9%高、富士フィルム(4901)が10.7%高、マツダ(7261)が7.6%高、オプトラン(6235)が+23.1%のS高と、好決算銘柄が急伸したのに対して、任天堂(7974)、川崎汽船(9107)が一時マイナス圏になり、JT(2914)は1.3%安、キャノン(7751)も1.0%安になったほか、コロナ第8波観測による悪影響を懸念して、JAL(9201)が1.8%安、JR東日本(9020)が1.9%安になるなど運送や遊行などのコロナ関連が軒並み軟調展開になりました。好業績の値がさ株を中心にグロース株が大きく値上がりし、日経平均などの指数を押上げましたが、業績の冴えない銘柄や中小型株は置き去りになっているので、全面高になったという感触は少なかった。米10月のCPIを詳細にみるば、医療サービスが前月比ー0.6%と9月の+1.0%から大きく減速し、これがコア指数の押し下げとして働いたことが分かる一方で、CPIの3割以上と最も大きい構成比を占める住居費は+0.8%と9月の+0.7%から加速していることが判ります。相関性の高いS&Pコア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数などの米住宅価格の代表的な指標は今年4月をピークに減速しているため、1年程遅れて動く遅行性を踏まえれば、住居費の減速も時間の問題ではあるものの、遅行性は過去の推移からすると、1年から1年半のスパンとなっていることが多く、住居費の減速にはまだ時間がかかる見通しで、今後、コアCPIが前年比で+6.0台をしぶとく維持する可能性もあり、今回のCPIを受けた株高の賞味期限は長くても、次回分が出てくるまでの約1ヶ月といったところだ、とフィスコの専門家は指摘しています。実体経済に目を向けても、世界経済は明らかに減速方向にあり、インフレの水準が依然として高いため、景気後退入りしたとしても中央銀行による金融緩和は期待できず、ファンダメンタルズとしては悪化方向にあることに変わりはなく、今後の株式市場については、短期的には上昇傾向にあるものの、ある程度の水準訂正を果たした後は、再び下値模索の展開になる可能性があるとも指摘しています。隠れ家(私はRIO21の隠れ家です)としても、日経平均が+2σを超えて来て、天井感を感じているところで、利益の確定を始める必要はあると考えています。ただ、+2σはここから急上昇するため、もうしばらくは上値を追っても不思議ではないとも思っています。11日の東京市場では大型グロース株が大きく上げた一方で、中小型のバリュー株などが置き去りになっていることから、それらの出遅れ物色に期待したいところです。