楽しい時間は

あっと言う間に過ぎるって言うけど。


それを今、

俺は身に沁みて感じている…。



「はあ〜。マジで美味かったわ。

あの麻婆豆腐」

「だよね!?ね、ね、また一緒に来よう

ね?櫻井さん!」


「あぁ。あそこ、俺らの御用達にしちゃ

う?」

「する!する!」


街灯を辿りながら二人、夜道を歩く。

美味しい夕飯は、今日も俺たちを
幸せに導いてくれたようで

相葉くんも俺も終始ご機嫌だった。




「よかったぁ。俺、勢いであの店に櫻井さ
ん連れて行っちゃったけど、大丈夫だった
か心配だったんだ」

「すげぇ満足だよ?相葉くんの好きな店も
分かったし、料理もすげぇ美味かったしね」

「本当?」

「あぁ。めちゃくちゃ気に入った」


それに、、、


とても
楽しかった。



相葉くんは見かけによらず、よく食べた。

『ねー、ねー、櫻井さん。餃子と春巻き
頼んでいい?油淋鶏と青椒肉絲も食べた
いなぁ…。デザートは杏仁かなぁ…。ゴマ
団子も美味いよね?あっ!櫻井さんは何が
食べたい?ごめん、俺ばかり選んじゃって』

って、

本当に全部注文しそうな勢いの相葉くんに

『相葉くん…そんなに食えるの?www』
『え……。……食え…ない……か?www』
『…だよね?』

あははははっwww
あひゃひゃひゃwww

俺は大笑いした。


おまけに、今日の相葉くんは、
よく喋って…よく笑ってた。


『今日さ、受付に来たおじいちゃんに、
こちらへどうぞって、手を出したらさ、
握手されたの〜wwwビックリだよね?
俺、思わず笑っちゃったぁ。あひゃひゃw』


食べて、飲んで、喋って、笑って


『櫻井さん、楽しいね?』


って。


ほんのり頬を
ピンクに染めて笑う相葉くんは

最高に可愛くて。

くふふっ。

その笑顔は最強だった。


その度に

好き、だなって…。


何度も

何度も…


何度も思った。


少しでも一緒にいたくて
帰りは送るよ、なんて言ってみたけど
相葉くんちは
大野クリニックのすぐ裏で
今の店からも、歩いて5分もかからない。

夜道を楽しむ間もなく気付けば

相葉くんの家の前だった。


はぁ…。時間、足りねー。



「今日はごめんね。櫻井さんが誘ってく
れたのに、俺、勝手に自分が好きな所に
引っ張ってっちゃって」

「いえ、いえ。美味しい店に連れて行っ
てくれてありがとうだよ」

「俺さ、つい興奮すると
なにも考えずに行動しちゃうんだよね。
櫻井さん!お願いだから、そういう時は
全力で止めてよね?」

ぷっwww
「今日はそんなに興奮してたの?」

「あ…うん…/////」

「そっか…。本当に楽しみにしてくれてた、
って、思っていいのかな?」

「し、してたよっ!すごく!
お昼からずっと楽しみでドキドキして
たもんっ!」

そっか。

その言葉だけで俺は十分。


ドキドキも…してくれてたんだ、ね。


「ずっと、待ってたんだもんっ!
櫻井さんが誘ってくれるの」

え?

「そう、なの?」

「そうだよ!なのに、なかなか
誘ってくれないからっ!」

「そりゃ、ごめん。でも、相葉くんから
誘ってくれてもいいんだよ?」

「////あ"…。だって…ほら。もしかしたら
社交辞令かもしれないのに…俺…本気に
して誘ったら迷惑じゃん…」

「そんなこと…」

「てか…単に俺が…櫻井さんから誘って
欲しかっただけだけど…えへへ/////」

「え?」


それって…どういう…?


「誘って欲しかったんだ。 櫻井さんから。
だって…
ちゃんと、約束覚えてるよ、って。
俺のこと、忘れてないよ、って、さ
思いたいから…さ」

「相葉くん…」

「はっ!え?も、もしかして、俺…重い!?

ごめんっ!櫻井さんっ」


「あははwww。重くない、重くない。

逆に…そう思って待っててくれてたことが…」




嬉しいよ…。


「本当?」

「ん。本当」


相葉くん。
本当に君は …

なんて

素直で可愛らしい人なんだろう。


全然飾らず
感情をそのまま言葉にしてくれるから
俺はその度にドキドキさせられるよ。


それなのに…

こんなにドキドキさせられるのに

一緒にいると心地いい。


こんな人は

初めてだ。




惹かれる。


惹かれて止まない。

初めて会った時から
その気持ちはどんどん加速していく。


「相葉くん…俺…」

「ん?」

「俺…ね」

「うん?」


どうしよう。

好き、が。

今にも溢れそうだ。


「ま、また、相葉くんと飯行きたい」

「俺も!俺もだよ!櫻井さんっ!




伝えたい。


伝えたいのに


伝えられない。


たった二文字の言葉。



伝えてしまうと

君に

嫌われてしまいそうで。


出逢って数ヶ月。

まだ、だ。


伝えるのは


まだ早い。


いつか

伝えて嫌われしまう、その前に


もう少し君と

幸せな時間を過ごしたいから。

まだ…

もう少し

このままで。


「近いうちに、また誘うよ」

「うん。今度は櫻井さんのおすすめの店
ね?」

「おけ。じゃ、また」

「うん。櫻井さん、今日はありがとう」

「こちらこそ」

「気をつけて帰ってね」

「あぁ。相葉くんも。

…って、そこだけどwww」


「は〜い。気をつけまーすwww」


おやすみなさい。


小さく手を振って相葉くんは
大野クリニックの後ろに消えていった。








※相葉くんのおじいさんの握手の話は 
職場での同僚の実話ですwww