「相葉くん、なに食べたい?」

「え〜。なんだろ?櫻井さんは
いつも何を食べるんですか?」

「う〜ん、蕎麦が多いかなぁ。
1人でサクッと食べれるからさ」

「あ〜。なるほど」

 

大野クリニックの近くは、意外と飲食店

が多い。


朝はそんなに混み合わない小道さえ

昼になると、人通りが激しくなる。


いつもは、そんな人混みがウザく感じる
のに、今日は全く気にならない。

それどころか、歩き慣れたこの道が、
すげぇ輝いて見える。

俺の隣で、相葉くんが歩いている。  

ただ、それだけなのに。


誰と一緒に歩くかで、景色ってこんなに

変わるものなんだ…。


なんて、


浮き足立ってる俺は

どうかしてるのか?



チラリと相葉くんの顔を窺えば

「ん?」

って、首をかしげて
微笑みながら 俺と目線を合わす。


だ〜か〜ら〜っ!

なんなんだよっ!
この仕草!

クソかわいんですけどーっ!?

目線合う度にそんなことやられたら
俺、心臓持つ気がしない…。


「あ、ここ、どう?
俺がたまに行く定食屋だけど…」

「え?櫻井さんが行くとこ?わっ♡それ

なら行ってみたい!」


「……………」

「ん?どうしたの?櫻井さん?」


うん。

多分、俺、やっぱり心臓持たないと思う。



相葉くんって…

もしかして女子なのっ!?
実は女子なのか!?

『櫻井さんの行くとこなら…?』


って…。


な…。

なんなんだよ!?その返事っ!?

堕ちる…。

こりゃ、堕ちるぞ、俺。

てか、もう堕ちまくりだわ!


「あ、いや/////。えっと…

じゃ、ここにしようか?席空いてるみ

たいだし…」


「はいっ!」


すげぇ満面の笑みで返事されて
柄にもなく、胸がキュンキュンしてる。


困った、な。


これは、本気でヤバいかも。


「櫻井さん?
さっきからどうしたんですか?」


店の入口の前で立ち止まったままの俺を

心配そうに覗きこむ相葉くん。


え?

「うわっ!/////」

「ん?」


ち、近い!近い!近い!
近いよ、相葉くんっ!


心臓に悪いから
その距離感で来るのは
やめてくれ!


「あ、あ、あの、な、な、な
何食おうかなって/////」

「え?お店に入る前から? くふふ
櫻井さん、せっかちすぎ〜www」

「あはは…。だよね…/////」



いらっしゃいませ〜。


店員の声に引っぱられるように

席に着くと
向かい合わせに座る相葉くん。


ドクドクドクドク…


俺の心臓はさっきから慌ただしく

なりっぱなしだ。


まるで長距離走を走ってるんじゃないかと

思われる程の勢いで脈打ってる。




ヤバイ。

これは、マジだぞ。



俺、
マジでカンッペキに

相葉くんに…


惚れたんじゃねっ!?


突然押し寄せてきた恋の波。

これがいわゆる

一目惚れってやつ?



「相葉くん、何にする?」


波打つ心臓を気の所為にして

平静を装いながら
相葉くんにメニューを渡す
俺の声は…

自分でもビックリするほど

甘く優しい声だった。