「さ、さ、さ、智くんっ!!!」


「どうした〜。翔くん。珍しく鼻息荒い
なぁwww」

「だ、誰っっっ!?あれっ!」

「どれ?」

「あれっ!」

「だから、どれ?」

「う、受付のっ!」

「あー。相葉ちゃん?翔くん初めて会うん
だっけ?」

「相葉…ちゃん?」

「ふふふ。かわいいでしょ〜。おいら女の
子かと思って雇ったら、男の子だった〜」


……はいっ?


智くん?
そんなことってあります?

いや、確かにかわいいよ?

かわいいけど、さ。



「なんてねー。それは冗談だけどさw」


冗談かいっっっ!
智くんならあり得ると思っちまったわ。


「めちゃくちゃイイ子だよ?患者さんにも
優しいしね。相葉ちゃんを雇った俺、見る
目あるわ〜」

「あ…うん。すげぇ…感じのイイ子だね!
智くん、見る目あるよ!」



そう。


俺が今、タメ口で話してるこの人が

この病院の院長、大野智院長。


大野院長はちょっとふわふわした

不思議な先生。

でも、腕はめちゃくちゃイイ。

腕の良さと人柄で
いつも診察終了時間過ぎても患者さんで
あふれてて、大忙しだ。

それでも…どんなに疲れてても、いつも
誰にでも、一人一人親身になって、変わ
らない対応をするから、マジですごい人
だと思う。

でもって、患者でもない俺の話もちゃん
と聞いてくれるわけだから…もう、神か?
菩薩か?のレベル。

そんな大野先生を、俺は尊敬してるし、
大好きで、いつの間にか
大野先生とは何でも話す仲になっていた。


先生は俺を翔くんと呼び
俺は先生を智くんと呼ぶ。

ありえねーよな?www

本来、医者とMRが懇意にすることはない。
MRを毛嫌う医者も少なくはないだろう。

なのに、智くんは、初めて会った時から
ウェルカムで、いきなり俺を『翔くん』と
呼んだ。

本当…変わってるよ…。



「で、今日は何の話?」 


「あ〜。そうだ。新薬の紹介を…」



いけね。

仕事忘れてた…。


慌てて鞄から資料を取り出して
智くんに説明を始めた。
 
ほらね。
この病院はマジで居心地良すぎなんだよ。 
仕事中だということも忘れちまうんだから。

気をつけなきゃ。





「なぁ、翔くん?……駄目だからね」 



薬の説明が一通り終わると 

智くんがポツリと言った。


「は?何が?」

「うちの受付嬢に手を出しちゃ、駄目だ

からね?」


「はーっ!?な、な、何言ってんだよ!」

「だってぇ、相葉ちゃん見て

珍しく翔くんが興奮してたし、さ」


「こ、興奮なんてしてません!」


嘘です。


かなり、、、してました。


「珍しく褒めまくってたし〜!」


「いや、俺だって人を褒めることくらい

あるしっ!」



てか、
内心はもっともっとべた褒めですけどね。


「じゃ、大丈夫か?ちょっと待ってて?」

「何?」



智くんは、ギシッと音を立てて立ち上がる

と、診察室の奥へ入って行った。



「相葉ちゃーんっ!相葉ちゃん、
ちょっと来てーーーーっ」


え?


え?


「はーいっ!」


えーーーーーっ!
呼んじゃうの?あの彼を呼んじゃうの?
ちょっと待って!
心の準備がーっ!


「先生、どうしました?」



パタパタとやって来たその人を、智くん

はニコニコと嬉しそうに俺の目の前に立

たせた。



「ほら。紹介するよ。おいらが前に

話した、翔くん。さくら製薬の」


「あ。ですよね?くふふ。
すぐ分かりましたよ?」

「な?言った通りだろ?」

「はいっ!」


え?えと、、、

「あの。何が言った通りなの?」

「先生は、よく櫻井さんの話してて…。
製薬会社で1番のイケメンだって」

「え?嘘っ!?それ嬉しいけどヤバイや
つじゃんっ!?大丈夫?今日でイメージ
ダウンしてない?」

「くふふ。ダウンどころかアップです!」


いや、いや。
今の今までアップの要素、どこにもねぇよ
な?

「行って来ますって、、、手を振ってくれ
た人、初めて見ましたwww」

あ…。そこ?www

「あはは。相葉くんにつられて、つい…」

「くふふ。嬉しかったです!」


お〜!でかした、俺っ!

咄嗟とはいえ、相葉くんに好印象与えた

とは!出だし好調じゃん!


て、出だし…って、なんだ?



「先生は、いつも櫻井さんのこと、褒め

てますよ?イケンで頭切れて、なのにそ

れを全く鼻にかけてなくて性格もいい、

すごく頼りになる人だって」



うぉぉぉっ!ベタ褒めじゃん!
智くん…ありがとう。

相葉くんに、そんな良いイメージを

植え付けてくれてたなんて。

ナイスだよ!智くん!

「ただ、ちょっと…ヘタレで残念なとこも
あるけど…って」


は?


「それはそれでかわいいって、、、」

「智くん?それ、いらない情報…」

「あははwww。めちゃくちゃ褒めてるぞ?
なぁ?相葉ちゃん」

「はい!めちゃくちゃ褒めてますよね?

おおちゃん先生?」



うん…褒めては
くれてるみたいだけどね。

てか、おおちゃん先生って、呼んでんの?

え…マジか…。

呼び方まで可愛すぎだろ!相葉くんっ!


「さーてと。自己紹介はこれくらいにして、
2人で昼飯でも食ってきたら?」


「「えっ!?」」



どういうこと!?


2人でって…。あ、あ、相葉くんと?

…俺?…だよね?



「翔くん、今から昼だろ?相葉ちゃん
最近こっちに越して来たばっかりだから、
店とかあんまり知らないんだよ。

翔くん、美味い店連れて行ってやってく

れよ」


「あ、そ…うなんだ。じゃ、相葉くん、
どっか食いに行く?」

「えっ!?✨いいんですかっ!?」


うわっ!
目が…キラキラしてるんだけど!

眩しい…。

俺、こんな眩しい人と二人で食事すんの?

大丈夫か?。



「あ、相葉くんさえよければ……」


「わ!本当に!?やったっ!じゃあ、俺、
ちょっと準備してきますねっ!」


やったっ!…ってwww
いちいち反応が可愛くてヤバイ。


「うん。あ、慌てなくていいよ」

「はーいっ!うわっ! イテッ!」


あははwww

めちゃ慌ててるじゃんwww



うん。

マジ

かわいい…。


てか、さ。いいのか?

この流れに乗っても。


なんか急展開すぎて、俺、かなり

パニクってます。



「智くんは?行かないの?」

「俺はニノと食うから」

「そっか」


ニノはこの病院に前からいる事務員。

智くんのお気に入りで、
多分…付き合ってる。

相変わらず仲良いな。


「翔くん?」

「ん?」

「くれぐれも、相葉ちゃんには手を出す
なよ!」

「はい、はい」

って…。

とりあえず返事はしとくけど。


智くん…。

手を出すなって…言われても…。


「櫻井さ〜んっ!お待たせ〜!」


ぐはっ…////
この可愛さよ?

うん。

やっぱ、ごめん。


こりゃ


無理かも、、、だわ。