『翔ちゃん…ずっと一緒だよね?』

雅紀?


『俺たち…ずっと一緒だって言ったよね?』


あぁ。



『嘘つき』

え?


『翔ちゃんの嘘つき』


ちょっと待って!雅紀!

どこへ行くんだよ…





まさき!?


まさきっっ!!


……。


ガバッ!



夢…か…。


…はぁ…。ヤな夢…


そろそろ…言わなきゃな…。

でも

言ったら…?

雅紀はどうする?

俺達は…どうなる?


はぁ…。

俺は

あの笑顔が…消えるのが怖いんだ。
怖いんだよ…。





ガチャッ

「しょーちゃんっ!おっはよー!」

「うぉぉぉっ!おまっ!おまえ!
 ノックぐらいしろよっ!」

「え。な〜に?疚しいことでもあるの?」

「んなの。ねぇーわっ!」

くふふ
「はーい。起きるよ〜」 


やっぱ…言えね。

こいつから笑顔を消すことなんて…

できねぇ…。


俺は、掛け布団をめくろうとする雅紀を
ベッドに引っ張りこんだ。


ひゃっ!


「ま〜さ〜き〜。まだねむ〜いっ」

「なに?翔ちゃん?ひゃあぁぁっ」

「雅紀って肌スベスベだな〜」

「ひゃっ!ちょっ!まった!」


思いの外、雅紀の肌が気持ちよくて
暫くさすりながら雅紀の首元から
息を吸い込んだ。

ほのかに甘い香りに動きが止まる。


「翔…ちゃん?」

「んー。雅紀いい匂いー」

「ちょっ!どうしたの?翔ちゃん?」

「人間抱き枕…気持ちいい…」


雅紀のスベスベの肌に誘われて…
また、俺の手が動き出す。

「雅紀って…気持ちいいんだなぁ…」

「ちょっと!やめ…」


顔、首…
いつの間に俺の欲求が溢れ出し
シャツの裾から手を這わせていた。


「あっ…し、翔ちゃん…やっ…」




バフッ!


ぐぇっ!


「何、寝ぼけてんだよ!
 この変態エロおやじっ!」


はっ!


枕がぶっ飛んできて
我に返る。


「あ!?わっ!ご、ごめんっ!」



やべ。まじ、やべ、
俺、何してた?
うわっ!
雅紀にオサワリしまくってた!?

やべ。
俺、マジやべっ!
マジで変態エロおやじだーっ!




全くもぅ…。

「順番…違うだろ…」


「は?」


順番って…

順番違うって

え?


それって…


どゆこと?




「ほ、ほら。いいから、行くよ?
 早く着替えて!俺、下で待ってるから」


「あ、あぁ…」


やらかした俺に
怒った様子ではなく

真っ赤な顔して俯いたまま
妙な空気だけ残して
雅紀は部屋を出て行った。


はぁ…。

やらかした…。


そう、思いながらも…俺は…
雅紀に触れた肌の感触が忘れられずに

今まで感じたことのない
歓びのような…興奮のような…
胸の熱い何かが溢れて止まず…
 

ガチャッ


「しょーちゃん!何してんのっ!」


雅紀の2度目の訪問まで
ベッドから抜け出すことができなかった。



そんな、ちょっとドキドキの朝も
学校へ足を踏み入れれば、文化祭の準備で
バタバタの朝。


準備は日々着々と進んでいて、学校中の
空気がなんとなく浮足立って感じる。

どの学年も、毎朝少しずつ早く登校して、
帰りもギリギリまで居残りで準備に追わ
れていた。


それでも、やっぱり
俺たちは相変わらずで…



「雅紀?終わった?」

「あ!翔ちゃんっ!今終わったとこ」



待ち合わせては下校した。



「相変わらず仲いいね〜」

「えへへ。羨ましい?」

周りからそう言われる度に、雅紀は
嬉しそうに腕をからめて返事をする。


「櫻井先輩も大変でしょ?
 こんな天然ちゃんの面倒みるの」

「むっ。なんだよ!風間ぽん!俺の方が
 もっと大変なんだぞ!こう見えて翔ちゃ
 んはなっ!意外とだらしなくて…んがっ」

「こ、こら!雅紀!余計なこと言うなっ!」

おいおい。
凛とした生徒会長のイメージに
ダメージを与えるなっ!

慌てて雅紀の口を塞ぐ。


「だって…家ではいつも俺が…」

「うん、うん。分かってる。
 雅紀にはちゃんと、いつも感謝してるよ」


家では雅紀がいないと
何もできないこと…
ちゃんと自分で分かってるから。


気持ちを目で伝える。



「ん…。なら…いいや…」


雅紀の頭を撫でると
にっこり笑って俺を見るから
俺も自然に笑顔になる。


「……あの…」


「ん?何?風間ぽん」

「お二人はお付き合いされてるんですか?」


……。


「「は?」」


「いや…なんか…雰囲気が…甘いというか…
 なんと言うか…」


そういえば。

俺たちはコレが普通だと思ってたけど。


触れ合うことも
見つめ合うことも
ごく自然に
当たり前だったけど…。


これって…


傍からからみれば
恋人同士…?



「違うよ!風間ぽん!俺と翔ちゃんは
 お付き合い以上の関係だからっ!」


「えっ!?」


はぁーーーっ!?

「ちょっ…ま、雅紀っ!?」


お前!その言い方は…
やばいだろ…
完全に誤解…


「…そ…そうだったんだ…/////」


…した……よな……。
やっぱり…。



「い、いやっ!違うぞ!風間っ!俺達は…
 健全な幼馴染だぞ!おいっ!聞いてる?」


「……いや、そっか…。ただならぬ関係とは
 思ってたけど…そっか…。そうなんだ…」

「おい!風間!話を聞けっ!
『思ってたけど』ってなんだよ?おいっ!」


焦る俺の傍らで
ニコニコしてる雅紀は
自分が発した言葉の意味にちっとも
気付いていないし…。



「じゃ!また明日ね!風間ぽん。
 翔ちゃん♡行こ!」

「いや、まて!風間ー!違うって〜!」


雅紀の衝撃の一言で
全く俺の声に耳を傾けてくれない風間を
背に、俺は雅紀に腕組みされながら
仕方なく学校を後にした。



天然って…こええ…。