調理師学校がどうとかじゃないんだ。
ただ、俺は全然知らない方面だから、知識も情報も持ってない。そんな俺が家庭教師するって、大丈夫なのか?ネットで調べてなんとかなるものなのか?って不安になるじゃん。
てかさ、なによりまーくんが既に知ってたっぽいのが、すんごい気になる。明らかに知ってたよね?俺がゆうくんに言って貰えてなかった事実より、その方がよっぽど気になるんだけど!
そんな気持ちをグッと抑えて、俺はゆうくんに向き合った。
「進路、決めてたんだ?」
「…うん。でもなんか言えなくて」
「どうして?」
「どうしてって…」
目指している調理師学校は、基本面接重視で、あとは高校三年時の成績を提出するんだって。
だから俺には、日頃の勉強をみてもらえば充分なハズなんだ。
「でもそれじゃあさ、自分でやれよ!ってなるじゃん。それにさ、兄ちゃんが家庭教師してもらってる時は、模試だ合格判定だとかさ、あのイケメン先生に手とり足取りしてもらってさ、かずくんまで友達と一緒になって勉強会とかしてもらってただろ」
ゆうくんが一気に喋った。
イケメン先生は翔ちゃん、友達は潤くんだ。
「楽しそうだなー、いいなー羨ましいなーってずっと思ってた」
だから、親に出世払いを約束して、俺に家庭教師を頼んだのか。
「大学受験じゃないって言っちゃうと、合宿も連れて行ってもらえないって思ってさぁ」
「え!?なんだよ、おまえ合宿まで行く気だったの!?うそだろ…マジかよ」
それまで黙って聞いていたまーくんが、素っ頓狂な声を上げた。
「え?兄ちゃんたち行ってたじゃん」
「あれは翔ちゃんが別荘に誘ってくれたからで、特別なの!俺がかずを教えてた時は行ってないし。おまえ…どんだけずーずーしいんだよ」
しまいには「ちゃっかりしてんなあ!」と、笑ってしまってるまーくんだった。
ゆうくんがベッドからおりて、おれの前であぐらをかいた。ペコッと頭を垂れて言う。
「黙っててごめん」
「え、あ。うん」
「そこは正座だろぉがあ!」
すかさず兄のツッコミが炸裂。「そっか!」とゆうくんが慌てて座り直したから、「そんな、いいよ、いいよ」と俺のほうが焦る。
「料理のプロになるのが、ゆうくんの夢なんだね」
そう言ったら、顔を上げたゆうくんの瞳がキラリと輝いた。
「そう!いつかかずくんに美味いもん作ってあげるからね!そんで、かずくんに認めてもらって、また兄ちゃんと勝負だ!!」
ゆうくんが俺の手を掴んで、ぎゅうぅと握ったから、またもやまーくんにどつかれていた。