「そうだ、母ちゃん。俺たちメシ食ったらアパートに帰るわ」

急なまーくんの宣言に、おばちゃんがガッカリしたのが伝わってきた。

「学校も始まるしさ、まだ履修登録済んでないだよね。資料はアパートだからさ、早くやんないと!かずもだろ?」
「そ、そうなの?しょうがないわねえ」
「ご飯はありがたくいただきマス!」

そう言って手を合わせるまーくんに、おばちゃんが苦笑いをする。
そして本当に、夜も遅い中アパートに帰ったんである。玄関先で、「頑張れよっ」と手を振るまーくんに、ゆうくんが「ハイハイ」とテキトーに返したあと、俺に言った。

「そうだ、レオにお礼言っといて」
「レオ?」
「あ、山田くんね。仲間内ではそう呼ばれてるって噂で聞いてたけど、ホントにそう呼ばれてるんだなあ。カッコよかったなああ!」

ホンモノに会えたって嬉しそうなゆうくん。友達に自慢するな、コレは。
でもわかる。確かにカッコよかったもん。


ゆうくんが見えなくなった辺りで、まーくんに声をかけた。

「おばちゃんガッカリしてたよ」

すると、まーくんに「じゃあ、かずも実家帰らないとな」と返されて、俺はぐうの音も出ない。
だって今日は一緒に居たかったから。

「かずに大事な話があるから帰るよ」
「え?何の話?」
「帰ってからね」
「えぇーなにそれ」

なんだろう。まーくんの目が笑いを含んでいるから、コワイ話じゃなさそうだけど。
アレコレ考える俺に、まーくんが顔を寄せて囁いた。

「二人っきりがいいかなって!」
「………うん」

もうなんなの、突然男前MAXになるなって。
俺は赤くなる顔をまーくんの腕に押しつけて、見られまいと無駄な抵抗をした。
ちょっと期待してる自分が恥ずかしい。
恥ずかしいけど、今抱きつきたいなぁ。