「でもさ、今回思い知らされたよ。かずくんのこと、全然守れなかったし。それどころか、年下に助けてもらってさ」
ゆうくんが殴られた顔を擦りながら、しょんぼりする。
「俺、まだまだだなあって」
山田くんはなんだか格が違うって感じで、比べるのは酷な気がするけどね。
「詳しくは教えてもらってないけど、兄ちゃんも前にかずくんを守ったんだよね?あの、手をケガした時、そうなんだろ?」
そうだよ。
俺はまた思い出して心臓がヒヤリとする。
あの時、まーくんの手を傷つけたのは、あの酔っ払いの変態が俺を脅したナイフだった。
でも、傷はアイツがつけた訳じゃない。
その時ナイフは俺の手にあったんだ…。
「まあ、それはいいじゃん、昔の話だよ。それよか、ゆうがこれからどうするかってのが問題なんだろーが!」
「ちぇー、俺だって自分が情けないよっ」
ゆうくんが頭をガシガシ引っ掻き回した。
そんなゆうくんを見てるまーくんの目が優しい。
俺はそんな二人を黙ってながめた。
二人には二人だけの関係があるじゃないの。
弟って可愛いんだろな。
少し羨ましく思ってしまった。
「とりあえず、かずの事は諦めろ」
「なんでだよ、勝手に決めんなよ」
「しかたないだろ?」
まーくんの言葉にゆうくんはキッと顔を上げて、
「兄ちゃんに決められたくないね!人生何があるかわかんないじゃん。俺はかずくんに見合う男になる!」
「ハイハイ、おまえも懲りないねえ」
「そんなよゆーカマしてさあ!後で後悔しても知らないからな!」
「ハイハイ、ガンバってね」
ムキーとなったゆうくんとそれをいなすまーくんとが、またゴチャゴチャ揉めだした。
そこへまーくんのお母さんが、ノックと共に入って来た。俺も泊まるのかを聞きに来たっぽかったけど、そこでゆうくんの顔の痣に初めて気がついたみたいで。
「その顔、どーしたの!?」って、兄弟二人を質問攻めにした。
まーくんがテキトーに説明する横で、ゆうくんがポツリとこぼした。
「兄ちゃんばっか見てるから、気がつかなかったんじゃん」
急に子どもっぽくて、なんだか可愛かった。