手を握られてハッとした。

「かずくん、大丈夫?」

ゆうくんの声。
まーくんとは違う、乾いてひんやりした手のひらに違和感しか感じない。

「もう始まるよ」
「あ、えっと、ぼーっとしてた」
「怖くなった?」

まさか、まーくんのことを考えていたなんて言えない。
俺は「大丈夫」と笑って、ゆうくんのポップコーンを分けてもらうテイで、そっと握られた手をほどいた。
ゆうくんがじっと俺を見てる。
なんか気まづいな…と思ったところで、映画が始まった。


そこからはもう、スクリーンにくぎ付けで、最後まで目が離せなかった。
当時もおもしろいと思ったはずなのに、今観ると全然印象が変わって、信じられないくらい心に響いた。コワイというより感動みたいな。
なにが違うんだろう。
俺自身が変わったのかな?

もう一度まーくんと観たいな。
まーくんも感想が変わるのだろうか。


「なんか、深かった…」

映画館から出ると、ゆうくんがぽつりと言った。俺はまだ余韻から抜け出せず、「うん…」とだけ答えた。

来た時は薄明るかった街は、すっかり夜の顔をしていた。
駅前からスマホの地図を頼りにここまでたどり着いた俺たち。入り組んだ路地の奥であるこの場所が、なかなかおピンクなお店に囲まれている事に今更気がついた。

派手で露出度の高いお姉さんたち。
ギラギラした、女の子だらけの看板。
酔っているのか、ふらつくスーツ姿のおじさん。

高校生のゆうくんが居ていい場所じゃない。
俺はゆうくんの腕を掴んで、早足で歩き出した。

「かずくんはさぁ、女の子に興味ないの?」

え。
なに言い出すの、急に。