なんでまーくんがいいのかって…。
「えっと…、運命、みたいな?」
「はぁ?なにそれ」
「なんてゆうか、きっとね、大昔に俺とまーくんは二人でひとつの人間だったんじゃないかって思ってるの」
これは、ずいぶん前に美大生の大野さんに聞いた話で、二人でひとつだった人間たちが驕ったあげく、神様にバラバラにされてしまったと、信じられていた時代もあったんだって。
くっついてた相手が男と男、女と女なら同性を、男女なら異性を求めるらしい。
と言っても、俺はまーくんが男だから好きなわけじゃないけどね。
だから、俺たちひとつだったんじゃないかなと思う訳。
そんな話をしたら、ゆうくんはそれはそれは不満そうな顔をした。まぁ、そうだよな。俺だってよくわかってないもん。
「そんなんで誤魔化そうとしてんの?」
「誤魔化してなんかないよ」
どこが好きとか、なにがいいとか、じゃないんだよ。強いて言うなら、全部!かな。
でも上手く説明できる気がしない。
「かずくんは、兄ちゃんと…」
ゆうくんが言いかけたその時、天井の灯りを遮るように黒い影が被さってきた。
「楽しそうだな!俺も乗っかっちゃお!」
「ぐえぇ!!」
俺の真上にいたゆうくんが、スライドするように横にズレて、ぐしゃりと床に押しつけられていた。その上にはニコニコ顔のまーくんが、全体重をかけて乗っている。
「まーくん!」
「かずも一緒になって遊んでるとバイト代もらえないぞっ」
顔を寄せてきたまーくんが、笑顔全開でそう言った。笑ってるのに、なんかコワイんですけど。
俺は慌てて起き上がり、ちょこんと正座した。
「ゆうはさぁ、やる気あんの?リビングでやっててもこんなんじゃさぁ」
急にお兄ちゃん顔になるまーくんに、身を起こしたゆうくんがけんけんと噛みつく。
「こんなんってなんだよ!俺は、かずくんに大事な質問をしてたの!」
「へー、どんな質問?」
「…兄ちゃんには聞いてない」
「つれないなあ」
まーくんは笑いながらも、「母ちゃんに家庭教師代出してもらってんだからさ」とゆうくんを諭した。すると、
「俺は出世払いするって母ちゃんに言ってるんだからな、兄ちゃんと違って!」
ゆうくんが胸を張ったから、ちょっとびっくりした。