ハンバーガー三個をあっという間に平らげ、ポテトを摘んでいたゆうくんが、「あー!」と、急に大声を出した。
びっくりした俺はポテトにむせそうになった。

「どどしたの」
「思い出した!なーんかどっかで見たことあるような気がしてたんだ。アイツさ、前に兄ちゃんが入院した時、病院にいなかった?」

あぁ、まーくんが自然気胸になった時ね。

「うん。まーくんが動けなくなって、俺慌てて本郷に頼っちゃったから。彼、あの病院の院長の息子なんだよ」
「やっぱり。そーいや病室でも一度見かけたかも。俺と入れ替わりですれ違っただけだけど」

へぇ、本郷がまーくんの様子を見に行ってくれてたんだ。知らなかった。

「兄ちゃんとも親しいんだ?」
「親し…くは無いかな。まぁいろいろあって、それなりのつき合いはあるけど」
「ふーん」

どっちかと言えば、仲はよくないと思う。
幼稚園の頃ケンカして、まーくんがケガさせられたのが始まりで、高校で再会してからも、何やかやあったし。
しかもさ、まーくんは本郷が俺の事好きなんだとか言い張るんだよ。それっぽい態度はされた事あるけど、まーくんの言う「好き」とはちょっと違うんじゃないかなぁ。
それもあって、犬猿の仲と言える。

でも、二人が共闘して俺をつけ狙う変態オッサンから助けてくれたのは事実で。
そしてその時俺は、我を忘れて、まーくんにケガをさせてしまった…。

思い出すと頭痛がする。
黙り込んだ俺に気づいたゆうくんが、心配そうに覗き込んできた。

「かずくん?大丈夫?」
「……あ、うん」
「顔色悪いよ。お腹痛い?」
「だいじょぶ、だいじょぶ」

なんでだろう。
ゆうくんには知られたくない。
知ってるかもしれなくても、話したくなかった。あんな俺を思い出すのが嫌なだけかもしれない、けど。

『かずは、悪くない!』

あの時、まーくんが言ってくれた言葉を心の中で噛み締める。
あぁ、まーくんに会いたいな。
今すぐに。