本郷とは幼稚園からの腐れ縁で、実は俺も苦手なタイプだった。いや、今もあんまし得意じゃないけど。
まーくんとも因縁があったし、なんか意地悪されたりしたし。基本なんか怖いし。
でも高校生の時、俺最大のピンチをまーくんとアイツが救ってくれたんだ。
俺のせいでまーくんがケガをした事、ゆうくんは知ってるんだろうか…。
問題集を選びながら、よみがえった憂鬱な記憶に心の中でため息をつく。
ダメだ、だめ。ちゃんと選ばないと。
「うわぁー美味そう!」
「へ?」
「腹減ってきたなあー」
ほら!と見せられたのはグルメ本。
どこから持ってきたのか、いつの間にかゆうくんがページをめくっている。
やれやれ、まだ受験の実感ないんだろな。
「じゃあ、お昼ごはん食べに行く?ハンバーガーでよければ、奢ってあげるよ」
俺の提案に、満面の笑みでゆうくんがうなづいた。笑うとまーくんにそっくりだ。
まーくんもお昼ごはん食べてるかなぁ。
なんだか会いたくなっちゃったよ。
数冊の問題集を手にレジに並ぶ。
本郷の扱うレジを避けようと思うのに、こういう時に限って順番で呼ばれてしまう。
「ありがとうございました」という本郷の顔に、営業用スマイルはない。
接客業としてどうなの!?と心配になった。
そもそもむちゃくちゃ忙しい医学生なのに、バイトするなんて大丈夫なんだろうか。
「授業とか実験とか忙しいんじゃないの?」
「別に余裕だ」
ハイハイ、そーですか。
心配した俺がバカだった。
俺たちはさっさと本屋をあとにした。
本郷の目が俺たちの手をみている気がしたから、俺は荷物を抱えて持ち、ゆうくんの手をするりとかわしておいた。
近くのファーストフード店に入る。
ゆうくんは遠慮がちにハンバーガーを三個頼んだ。本当はもっといけたのかもしれないな。俺なんか一個だよ。だってそれ以上食べるとポテトが入んなくなっちゃうもん。
山盛りのトレイを持ち、やっと見つけた席にゆうくんと向かい合って座った。
なんだかソワソワ落ち着かないゆうくんに、「どしたの?」と声をかける。
すると、
「かずくんと二人でごはんって、初めてだ!」
そう言って目をキラキラさせるから、ちょっと驚いた。
言われてみればそうだったかも。
わずかに目元を赤くするゆうくんを、俺はちっちゃい子みたいで可愛いなぁと見つめた。