まーくんの心配もわかるよ。
前に俺がヤバいおっさんに襲われたから、警戒してくれてるんだって。
あの時は、まーくんと本郷に助けられたけど、まーくんの手のひらにはその時の傷がうっすら残ってる。俺のせいでついた傷跡。
まーくんは「かずのせいじゃない」って言ってくれた。でもやっぱり俺の軽率な行動のせいなんだもん。忘れられない、忘れる訳にはいかないんだ。

「かず!見た?見てた?俺、ホームランだったよ!」
「え、あ」
「えー、見てなかったんかい!」

お布団を買いに行くと言いながら、バッティングセンターに寄り道してる俺たち。
元野球少年の俺たちにはうってつけのストレス解消法だから、ついつい足が向いちゃう。

「俺だってホームラン打つもんね!」

そう言って、俺はバットを構えた。
「おお、いけいけー!」と、まーくんが笑顔でけしかけてくる。

まーくん。
克実ちゃんは大丈夫だよ。
見た目はあんなだけど、ちゃんとした有名な作家さんで、映画とかドラマとか結構なってるし。家族と住んでる本当のお家もあるし。
なにより、美人な奥さんとのツーショットをこっそり飾ってるようなおじさんなんだからさ。

「俺だって、克実さんはいい人だと思ってるよ。けどさ、かずはもう少し気をつけた方がいいんじゃないかって、俺は言いたいのっ」

まーくんは少し顔を赤くして、俺を見た。

「わかってる。だから俺、アレ以来人の事よぉく観察するようにしてんの。それだけでも結構見極められるもんよ?」
「本当にぃ?」

まーくんはまだ心配そうだった。
そんなまーくんを見ると、全身がなにか温かいものに包まれるような気分になって、ほわほわしてしまう俺は、悪いヤツなのかもしれない。
まーくん、ありがとう。
いつもそう思ってるよ。
言葉に出しては伝えないけどね!