暗い夜道を、翔が運転するワンボックスカーに乗って四人で移動する。

助手席には四角い緑色のロボット。
大きな目にいくつもの光を点滅させて、じっと前を見つめている。その目が捉えた位置情報が、潤のパソコンに表示されていた。

「…ほんとに居場所がわかるの?」

潤の隣で雅紀は不安そうにモゾモゾした。
なぜならば、そのロボットの見た目がひどく古臭くて、とてもじゃないがそれほど有能には思えなかったからだ。
翔の診療所で診察の手伝いをしているのは知っている。合う白衣が無くて、白い割烹着を着ていた。
けれど、動きもぎこちないし、「手」なんて輪っかに切れ目を入れたような形をしているし。昔話に出てくるようなその姿には不安しか感じない。

「翔ちゃん、ポンコツだって言ってなかった?アンドロイドのにののほうが使えるって…」

雅紀の言葉にロボットが反応した。

「ポンコツじゃナイ!センセイひどイ!」
「言ってないって、コラ、暴れるな!」

前の席で揉め始めるからパソコンの画像が乱れて、潤が「ポンコツなんかじゃないよなあ!」となだめに入る。ますます不安になる雅紀に、一番後ろの席で寝転んでいた智が声をかけた。

「嘘じゃないぞ。マジで優秀なんだからな、コイツは。なにしろ透視できるんだからな!」

元々は戦闘用ロボットで、どこかの戦場から流れてきた物を智が手に入れたのだという。
本来のシャープな機体はほぼ壊れて使えなかったが、内部の索敵のための透視という最高級な機能が奇跡的に無事だったため、智が古い部品を集めて改造したのだ。

「古きよき時代の憧れのロボットとして蘇ったんだぞ〜!なあ、タング!」

なるほど、この姿は昔のSFへのオマージュだったのか。雅紀はこの前智が古いラジコンカーを修理していたのを思い出した。

「ターング!」

緑のロボットが両手を上げて返事をした。そうだ、名前は「タング」だった。

「その素晴らしい機能もそうそう使う事がないんだけどな。いわゆる宝の持ち腐れって奴。あ、でも、身体の中に残ってる銃弾とか、刺さった鉄パイプとかの時便利だね」

翔ちゃんが苦笑いでそう言った。本当にとんでもない患者を相手にしているものだ。


「にのの身体の中にあるスライム、結構レアな金属だから見つけやすいと思うんだけど…」

パソコンを操作しながら潤が独り言ちた。
タングの索敵範囲はそこそこあるが、もし飛行機などで移動されていたら、もう追うことは不可能だ。マップを追う潤の表情に焦りが滲む。
最初にタングが指した北へ車は走り続けているが、それも正しいのか。

その時、マップ上に光る点が現れた。

「見つけたみたいだよ!」

潤の声に雅紀が身を乗り出してパソコンを見た。情報を送られたナビを見た翔は、眉間にしわを寄せ唸った。

「嘘だろぉ…」