夜には工房の二人もやって来て、みんなで餃子パーティとなった。

アンドロイドのにのは、まさに餃子製造マシーンと化しており、せっせと皮で包んだ大量の餃子を次々と焼いては提供してくれる。
久しぶりに料理をした雅紀は、途中で腰が痛くなってしまったが、機械の彼は材料がある限り休むことなく作業を続けられるのだ。

「うめぇ!!」

翔は口いっぱい詰め込んで、まるでリスのようになりながら、大絶賛してくれた。その横で智と潤はタレをどうするか論争を繰り広げている。

「タレはやっぱり酢醤油だろ」
「酢コショウ試してみなって!」

自分の好みを絶対譲らない二人は、競うように餃子を口に運び、数も競っているようだ。

にぎやかな食卓に、雅紀は懐かしさを感じて涙腺が緩んでしまった。たった半年前には、当たり前の風景だったのに。
出来たての湯気がふわふわ出ている餃子を頬張ると、熱い肉汁と野菜の甘さが口いっぱいに広がって、しみじみおいしいと思った。

「はいっ、どうぞ!」

次の焼きたてをアンドロイドが持ってきた。
ごく自然に「焼いてばっかいないで、食べな…」と言いそうになって、雅紀は気がついた。
彼は食べない。食べられないのだ。
アンドロイドにとって食事とは、夜中に内蔵のバッテリーに充電することを意味する。
その事に今更ながら軽いショックを受けた。

台所に戻っていくアンドロイドのあとを追いかけ、雅紀はフライパンを手に取った。

「次は俺が焼くよ」

アンドロイドのにのは、ちらと笑って雅紀を見た。

「どしたの?食べてていいよ」
「いや、なんか。にのは食べないのに、こんなに作ってくれてさ」
「みんな美味しいって喜んでくれたね」
「ホントにおいしいんだよ。にのにも食べてほしかった…」

うつむく雅紀の手からそっとフライパンを取って、アンドロイドのにのは雅紀を見上げた。

「目で味わうこともできるんだよ。俺にはわかる、すごくおいしいって」

茶色の瞳が星のように輝いて見えた。
「ホントは食べてみたいけどね」と笑うその目が、少し潤んでいるように感じたのは、気のせいだろうか。
雅紀はそんなにのを抱きしめたいと思った。
そして、本物のにのに、今日の餃子を食べさせてやりたいと心の底から思わずにはいられなかった。