しかし、だからと言って三浦医師に責任を問うのは酷なのかもしれない。

そもそもの発端は、にのがある組織のヤバい薬や、毒、細菌を使った武器などについて調べていた事にある。テロ組織とも通じているような、まさに危険な相手の懐に潜り込んで、情報を集めていたのだ。

なぜならにのは、情報屋を生業にしていたから。別に正義のためとかではなく、裏社会で生き抜くための仕事に過ぎない。
闇医者の翔の患者、薬の入手。工房の取引相手、闇ルートの特殊部品の入手。果ては、雅紀の料理用の高級食材をお安く手に入れる所まで、様々な場所で顔が効いたにの。

その愛くるしい見た目と、頭の回転力の速さ、飛び抜けたコミュニケーション力で、大概の情報を易々と手に入れることができた。
正直、色じかけも使っているのではとの噂に、雅紀はいつもモヤモヤしていたのだが。
当の本人は、

「そんな訳ないじゃん」

と笑うばかりで、本当のところはわからない。

電子工学・製作専門の智をリーダーに、医療分野の翔、ITの鬼の潤、情報屋のにの、みんなの胃袋担当の雅紀の5人で組んで活動してきたのだ。

そんな時、事故は起こった。

「……ヤバ…い、かも」

雅紀にかけてきた電話で、そう言ったにの。
それが最後の言葉だった。

ヤバい組織の倉庫で起きた小さな爆発。
問題は爆発の大きさではなかった。保管されていた薬や毒、細菌だか、ウイルスだかが、その爆発によって漏れ出てしまったのである。
影響の大きさを恐れた政府、警察はすぐさま統制令を敷き、秘密裏に事故は処理され、倉庫で倒れていた人々は極秘で病院に搬送された。
その中に、にのも入っていた。
そして、極秘であるため、研究職に追いやられていた目立たない三浦医師が引っ張りだされ、治療の果てに、にのの最期を看取ったのだった。