え?その日の夜は盛り上がっただろうって?
いやいや、そんな訳ない。
だって病み上がりだよ、おとなしく寝ましたとも。手を繋いでくっついて寝たけどね。
それだけでも、めちゃくちゃうれしくてたまんなかったな。

それより、俺たちはこれからの事について真面目に話し合った。
とにかく家賃はありがたく甘えさせてもらう、まーくんのバイトを減らす、俺もバイトを増やし、お互い決まった額を出し合って生活費をまかなう、等など決めていった。

「もうまーくんに絶対無理はさせないから」
「別にそんな、俺…」
「はい?ぶっ倒れたのに何言ってんの」
「…すみませんでしたぁ」

これだから。
無理してる自覚がないんだよな。マジで気をつけないと、俺が。

「謝んなくていいのよ、むしろ無理させててごめん。俺が気づくべきだったのにさ」

そう言うと、まーくんが眉を下げた。まるでしょんぼりする大きなわんこみたい。
そのまま大きなわんこがのしかかってきた。

「かずのせいじゃないって。」

優しい重みにうっとりする。
この重みがいいんだよな、不思議だけどすごく気持ちよくて安心する。
大きな手にさわさわされて、うっかり流されそうになってしまった。

「もー、もぉーー!まだ穴ふさがってないのに!ダメだってば」

必死に理性をかき集め、イタズラな手を押し止めた。危ないあぶない。

「かずさぁ、無理しないでよ」
「むむ無理なんてしてないっ、俺はね、心配してんの」
「そうじゃなくて」

急に真面目な顔で俺を見つめてくる。

「今度はかずが無理しようとしてるだろ。それはダメだよ絶対」

真摯な瞳に胸が高鳴る。
そういうところ、ほんとズルいよね。無意識でやってんだろうけどさ。

わかってるよ、俺も無理しない。
がんばり過ぎは結局どこかに歪みができて、いつか破綻するんだ、たぶん。
だから「無理しない」って約束した。

それからひとつの布団でくっついて寝た。
ほらね?おとなしく寝たでしょ?
まだ塞がってない胸の穴が怖かった…わけじゃないからね!