ここのところ夕ごはんもいい加減で、コンビニのお弁当とかだったから、今日はさすがにごはんを炊こう。おかずは…、うーん。冷蔵庫に卵はあったよな。
お惣菜屋さんでとんかつを買って、これを麺つゆで卵とじにすると簡単カツ丼の出来上がり!って、まーくんが前に作ってくれたからマネする事にした。豪華に見えるし、ボリュームもある。
別にご機嫌取りってわけじゃないけど。
真夜中に菅田と出かけるなんてさ(由里子ちゃんもいるけど)俺はソワソワ落ち着かなかった。
なんにもやましい事しないし、なんなら菅田が由里子ちゃんと上手くいきますようにって、流れ星に願ってもいいと思ってるくらいだよ。
心の中であれこれ言い訳しつつ、足早にアバートまで帰ってきた。
「あれ…」
薄暗い二階への階段のところに、あの二つ隣の部屋に住んでいるオッサンが立っていた。向こうをむいていて表情はわからない。何か言ってる?
「おい、おい!」
うわぁ、どうしよう。
あの人、なんか苦手なんだよな。
「おい。こんなとこで寝るなよ。おまえ、大丈夫か?」
え…?
よく見ると、オッサンの足元に誰かいる。階段に寄りかかるように座り込んでいるようだ。
そろそろと近づいて、見覚えのあるスニーカーに俺の心臓がドクンと大きく跳ねた。
まーくんだ。
なにか応えているようだけど、くぐもった声なのでよく聞こえない。俺はオッサンを突き飛ばして、まーくんに駆け寄った。よろめいたオッサンが「おおい!」と文句を言ったようだが、構ってられない。
「まーくん!どした!?」
「……か、ず?」
「ねぇ!どしたの」
まーくんは顔をゆがめて苦しそうだ。
「胸が、痛くて、息が…苦し」
青ざめた顔。
俺は一瞬でパニックになった。