そういえば、この部屋に他の人が来たのは初めてだ。普通一人暮らししていれば、友達のひとりやふたり遊びに来るもんだと思うけど。

この前売店でバイトを始めたと話したら、潤くんが覗きに来た。
お水と文具をレジカウンターに置き、エプロン姿の俺を上から下まで眺め「うん、様になってる」と笑った。
聞けば、この頃翔ちゃん家にけっこう入り浸ってるんだって。俺と同じじゃん。
それで、俺たちの部屋にも遊びに来てよって誘ったんだ。

「行ってみたいけど…しばらくやめとくわ」
「なんで?」
「なんでって、なんつーか…そんな野暮じゃないんだよ、俺は」

ヤボ?どういうこと?
きょとんとする俺のおでこを潤くんがツンと突いた。

「せっかく二人で暮らしてんだから、しばらくまったりしなよって事。ほら、新婚さんみたいなもんでしょ」

「新婚さん」という言葉に、全身から火が出るかと思った。お客さんが少ない時間でよかった。思わずグーパンチで潤くんの腕を押す。レジ打ちがちょっと乱暴になってしまった。

「そんなんじゃないもん。あいつ、めっちゃ忙しくて、あんま部屋にいないしっ。学校行ってバイトたくさんして、最近なんかサッカーまでしてんの。やりすぎじゃない!?」
「サッカー?へぇ、ニノはやらないの?」
「やんないよっ」

潤くんはじっと俺を見てニヤニヤした。

「寂しいんだ?」
「べーつーに」
「いきなり放置プレイとは、相葉さんもなかなかやるねぇ」

ほほほほ放置プ……!
俺は恥ずかしさのあまり絶句、そして硬直。
潤くんは「がんばれよ〜」と手を振って去っていった。なんだよぉ、潤くんのばか。


なんて事を思い出して、まーくんに「友達呼んだりしないの?」って聞いてみた。

「呼ばないよ。一度呼んじゃうと溜まり場みたいになるかもしれないだろ」

それは絶対イヤなんだって。
だから実家を出てることは話してないらしい。
潤くんや翔ちゃん、風間ぽんくらいまでかなってまーくんが指折り数えてる。
俺も大学の友達はまだあんまりいないし、呼ぶことは無いだろな。

おっと、2限の講義は受けないと!
いつまでも俺の膝枕でゴロゴロしているまーくんを急かし、朝からカップ麺というなかなかなご飯をかき込んで学校へ向かった。
今日は朝ごはん用になにか買って帰らなきゃな。