今年は空梅雨みたいだ。
六月の頭からすでに暑くて、初夏というよりもはや真夏並に太陽がやる気満々で、七月に入る前からクーラーのお世話になる日もあった。

俺は大学生協の売店でバイトを始めた。
まーくんと大きいカフェテリアでお昼ごはんの待ち合わせをしている時に、併設されてる売店でバイト募集の張り紙を見つけたんだ。
俺、家庭教師ってガラでもないし、コンビニだと夜とか心配だってまーくんが言うし(過保護過ぎない?)、ここならアパートから近くて、大学関係者相手でまぁ安心?って事で働きだした。

同棲計画はほぼ完了状態。
実家には週に一度くらいしか帰ってない。

「さすがにまさきくんの負担になるでしょ」

呆れる母さんはもうほぼ諦めてるみたいで、持ち帰るためのおかずと、最近は生活費的な多めのお小遣いを渡してくれる。
それも申し訳ないなぁって、バイトを始めた訳だけど。
実際のところ、二人で暮らすのにどれくらいかかってるのか…よくわからない。まーくんに聞いてもはっきり教えてくれないんだよな。

「家賃はばーちゃんに免除してもらってるから、全然大丈夫。心配しなくていいから」

そう言われてもさぁ。心配になるじゃん。
だいたい働きすぎなんだよ。
五月の連休なんか、ほとんど例のサッカークラブのお手伝いだったし。めっちゃ日に焼けてさぁ。
べべ別に、二人でどっか行きたかったとかじゃないよ。俺、インドア派だし。ほっとかれて寂しかったとかじゃないもん!
夜はずっと一緒だし!それだけで俺はうれしいよ。けどさ、けどさぁ。働き過ぎじゃないかって言ってんの。

「ただいま〜」

今朝も早くからランニング。汗をぷるぷるかいて帰ってきた。

「…おかえりぃ。ねぇ、少し休んだら?」
「なんで?朝走ると気持ちいいよっ?かずも走ろうよ!」
「……遠慮しとく」
「なぁんでだよ〜」

なんでって、朝ダルいのはまーくんのせいじゃん。こんなに忙しいのに毎晩…って、体力おばけにもほどがあるだろ。
俺は恨みがましい目でまーくんを見る。ついでに腰の辺りもさすっておくのも忘れない。

「えっ、腰痛い?あ、それともおしり?」

おしり言うな!恥ずかしいわ!
俺は布団のはしに置きっぱなしになっていたバスタオルをぶん投げた。まーくんは笑ってそれを持ってシャワーを浴びに行った。

ノロノロ起きて朝ごはんを準備する。
俺的にはコーヒーだけでいいんだけど、朝から活動量が多いまーくんにはそれじゃ足りないだろうから、食パンと目玉焼きをお皿に盛り付けた。

「お〜!おいしそう。ありがと!」

シャワーでスッキリしたまーくんがご機嫌な笑顔で、俺の寝癖だらけの頭を撫でた。
そして、俺の目の前にコーヒーしかないのを見て、

「だからさ、ちゃんと食べないと大きくなれないよ。はい、あ〜ん」

ちぎったパンに目玉焼きを切ったのをのせて、俺の口に押し込んでくる。
新婚さんかよ!
てか、もう大きくならないっての。
俺は耳が赤くなるのを止められなかった。