ハンバーガーショップで別れて、俺は一人でアパートに帰る。
繋がれてない空っぽの手がすーすーする。
さっきまでとはうって変わって重くなる足。
今日は独り占めする予定だったんだけどなあ!つまんないの!
見上げた空は、まだ五月なのにもう初夏並みに眩しかった。
途中、飲み物を買い寄ったスーパーは、日曜日だからか家族連れも多くにぎやかだった。カラフルな野菜や果物を見て、俺は急に思いついた。
そうだ、夕ごはん作ろう!
正直料理はほとんどしたことがない。それなのに、なぜそんな事をしようと思ったのか。
まさに無謀としか言いようがない思いつきだったけど、その時の俺はすっかりやる気満々で。下降線をたどり続ける気分を上げたかったのかもしれない。
なにしろ二人で暮らすって事に前のめりだったんだな。なんか、「理想」みたいなものがあったんだろう。
何を作るか悩んで、カレーに決めた。
一応キャンプとかで作った、てか、作ってるのを見てたし。ルゥの箱を見りゃできるだろ。
俺はおよそカレーに入っていると思われる野菜をカゴに入れ、肉をテキトーに選んだ。
お米まで買ったらなかなかの重さで、帰り道は手が痛くて少し後悔してしまった。
アパートのドアに鍵を刺す時はやっぱりドキドキした。買ったばかりのキーホルダーが、ポケットの中で温かくなっていた。
しんと静まり返った部屋。
節約のため、かき集めたちぐはぐな家具。色の揃わない雑貨類。少し短いカーテン。でも、どれもよそよそしくは無く、まーくんの温かい人柄が溢れていた。俺はご機嫌でその中に収まる。
いいんだ。帰ってくるのを待ってればいいんだからさ。
寂しくないといったら嘘になるけど、「待つ」のも楽しいんだと今更ながら発見して、俺は鼻歌まじりで荷物を取りだした。
できるだけ出費を抑えるため自炊をしようと、そこそこのものは揃ってる。デカいカレー用の鍋はさすがになかったけど。
てかさ、自炊といっても今日の買い物だけでも結構お金かかったんだよね。これはマジで俺もバイト考えないと。
そんなことを考えながら、カレーのルゥの箱とにらめっこ。材料を並べて腕組みして眺める。
……なんとかなるだろ!