二人でゆっくりコーヒーを飲む。
マグカップは家で使っているものを持ち込んだ。ほんとは新しくペアのマグカップを用意したかったんだけど、まーくん曰く、「いろいろ物入りだから」だそうで。つまり節約しようってことなんだろ?
柄も大きさも違うふたつのマグカップ。
いいんだ。まーくんの誕生日にペアで買っちゃおうと心の中でニマニマする。だいぶ先だけど。
「なに笑ってんの」
「え、笑ってた?」
顔に出てたんだ。ヤバいな俺、相当浮かれてるのかも。思わず両手でほっぺたを押さえた。
そんな俺を見てまーくんが破顔して、俺に手を伸ばして抱き寄せた。
「ちょ、コーヒー冷めちゃう…」
「ホントにうるさい口だよね」
くふくふ笑いながら口を塞いでくるから、もう反論もできない。別に、いいけどっ。
夕方、買い物をしに街まで出た。
たかだか一人暮らし(一応)。毎日豪勢な料理を作るわけでも、お客さんを招くわけでもないんだし、家からいろいろ持ち込んでもいるし。たいした事ないと思っていたら、案外必要な物がたくさんあって驚いた。大物は配送してもらうとしても、日用品もバカにならない。
「そっかあ、しくったなあ!」
俺は天を仰いでつぶやいた。
もらった鍵につけるキーホルダーを買うつもりだったのに。すでに両手には大きな荷物。
これじゃあ、あれこれ品定めできないじゃん。
まーくんに「また今度にしよ」と言われてしまってしょんぼり。大事な鍵だから早くつけたかったなぁ。もちろんお揃いの!
今度って言うけど、まーくん忙しそうだし。
今日もバイトかなんかの電話が何回かかかってきてたしさ。
俺のほうがそわそわ、せっかちになってしまう。
荷物をアパートに置いて、今夜はそれぞれの家に帰る。まーくんは俺を玄関先まで送ってくれた。
「んじゃね、おやすみぃ」
手を振り、帰っていく後ろ姿を見送る。
すぐそこなのに、やっぱり少し寂しい。
こんな事もあと少しだよね。