その日は結局、散々うだうだした挙句お互いの家に帰った。これからの事を考えるとそのほうがいいような気がしたんだ。

まずは親に了承してもらわないと。

さっきまでまーくんと一緒に暮らすなんて、本当にアリなのか、どーする!?とかぐるぐるしていたはずなのに、すっかりその気になってる自分にちょっと驚いてる。
それどころか最早、母さんにどう話そうかってそわそわ落ち着かないくらい。

緊張して開けたリビングのドア。

「…ただ、い、ま…………」
「きゃーーーー♡」

視線の先には母さんと姉ちゃん。二人してテレビの前で大盛り上がりしてる真っ只中だった。
画面には二人が推しまくってるアイドルグループ。そういえば今日の歌番組に出るとか言って、二人で朝からキャッキャしてたな。
今放送中なのかと思ったら、録画したものを無限リピート再生してる模様。って、どんだけ繰り返して観るんだよ。
とてもじゃないが、相談できる状態じゃない。
そわそわしたままソファの端っこに座って、
どう切り出そうかと考える。
けど、気がついたら俺まで画面に見入ってしまっていた。このグループ、結構好きなんだよな。

───明けない夜はないよLove so sweet♪

いいよな、この歌。なんか、背中を押してくれるって言うか、元気が出る気がする。

「……『信じることがすべて』かぁ…」
「あら!かずくん。帰ってたの?何か言った?」
「……なんも。ただいま」

部屋に入ってきたのも気がつかないってどんだけなのよ。不用心だなぁ。
ふと、姉ちゃんと目が合った。
そうだ。まず姉ちゃんに相談しよう。
姉ちゃんなら、俺とまーくんがただの幼なじみじゃない事を知ってるし、なんなら応援してくれてるし。
俺は上擦りそうになる声を抑えて、ちょいちょいと手招きした。

「姉ちゃん、ちょっといい?」
「へ?なぁによ」

きょとんとした姉ちゃんは、それでも俺について二階への階段を上がってきた。