あんまりお腹がすいたので、家に帰る前にラーメン屋に寄ることにした。
そこまでぷらぷら手を繋いで歩く。
幼なじみとして繋いでいた時はあんまり意識していなかったけど、こうして付き合うようになってから妙にドキドキしてしまうって、なんなんだろ。今更だよな。
やけに人目が気になったり、逆に「どうだ!俺のまーくんカッコイイだろっ」と自慢したくなったり。そういうところが子供っぽいのかなぁ。
「だから、話ってなんなの」
よっぽど空腹だったのか、すごい勢いでラーメンをすすっていたまーくんの丼に、脂っこいチャーシューをいつも通りお裾分けしながら、俺はもう一度聞いてみた。
まーくんは、口いっぱい頬張ってモゴモゴ言うから、とりあえずお腹が落ち着くまで好きなだけラーメンを食べてもらうことにして、俺もちるちる麺をすする。
冷たい水を一気飲みして、ようやくまーくんが満足したようで目をキラキラさせて俺を見た。
「ばーちゃんがさ、大学の近くにちっこいアパート持ってんの。最近一部屋空いたらしくてさ、俺、ずっと狙ってたんだよね。だから速攻、一人暮らししてみたいー!ってばーちゃんに頼んでみたわけっ」
えっ…………。
ヒトリグラシ?
「したら、まぁそれも人生経験だとかで、いいよって言ってもらえてさ。念願の一人暮らしができそうなんだ!」
部屋が狭いとか古いとか?なんかうれしそうに喋ってるみたいだったけど、俺はもう全然思考停止してしまい、耳に入って来ない。
え?あの今のまーくんの部屋は?
居なくなるってこと?
いつだって逃げ込める安心の場所なのに。
ウソだろ…。
「かずっ、聞いてる?」
呼ばれてハッとする。
気がついたら俺が残したラーメンもたいらげられていて、そのまま手を取られ店から連れ出された。外にお客さんの列ができていることにも俺は気がついていなかった。ちょっと足元がふわふわする。
「あ、えと…」
「だからさ!一緒に住もっ!」
えっ…………。
ええっ!!なにそれ。
一人暮らしって言ったじゃん。
一緒にって、それは一人暮らしじゃなくない?
話の展開についていけなくて、しばしボーゼンとする。バカみたいにぽかんと口を開けていると、
「え、え、ヤダ?イヤなの!?」
なんて言い出すから慌ててしまう。
待てまて待て!せっかちが過ぎるって。
「お、俺が?一緒に住むの?」
「そうだよ!当たり前だろ、他に誰がいるの」
「え、いや、そうだけど」
今日マスターのお店で待ち合わせたのは、大先輩のマスター達にいろいろ相談したかったからなんだと、まーくんは言った。