そのまま夜風に吹かれて家まで帰った。
他愛もないことを話しているまーくんの背中にほっぺたをつけて、その振動を感じていた。
俺が黙りがちなのを疲れたのだと思い込んでいるみたいで、「寝んなよ!危ないからっ」と時々振り返って声をかけてくる。
幼稚園児じゃあるまいし、そのよそ見のほうが危ないって。
「どうせ子どもだもん」
うちの車庫についたタイミングでそうつぶやく。
自転車から降りようとするまーくんの背中にぐずぐずくっついてると、大きな手が俺の膝をぽんぽんした。
「なぁんで拗ねてんの」
「拗ねてないし」
まーくんの背中が小さく震えて、くふふと笑う声が聞こえてきた。
「今はとりあえず合格すること考えればいいんだよ。別にそれが子どもっぽいなんてことないし」
「…………」
俺が考えてること、バレバレじゃん。
尖った口を見られたくなくて、おでこを背中にぐりぐりすりつけた。
おなかに回した俺の手を優しくほどき、まーくんが自転車から降りるよううながす。そして定位置に自転車を戻すと、俺のことを抱き寄せた。
「かずは子どもなんかじゃないよ」
そう耳元で囁き、唇がほっぺたを滑って俺にキスをした。大人のキスだ。くらくらする。
「子どもにこんなことしないでしょ」
ぼんやりとした灯りの中で、まーくんがうっすら笑うのが見えた。いつもよりずっとずっと大人みたいで、俺は少し怯んでしまう。
「まーくん…」
「帰したくない」
まーくんの腕が強く俺を抱きしめた。