テーブルを挟んでちょっとした攻防戦みたいになったから、まーくんがぶーたれた。
「なんでそんなに嫌がんの。一緒にいるんだからチューくらいしてもいいだろっ」
「だって…今日あんまし勉強できなかったし。帰ってやらなきゃならないのにさ、帰りたくなくなるじゃん…」
俺は小さい声でもごもご言い訳をした。
もう耳どころか、手の指先まであかくなってる。
そんな俺の様子に、まーくんのぶーたれた表情がゆるんで、両腕を広げてみせた。
「おいで」
俺は犬か。
そう思うのに、俺はこの「おいで」に弱い。
元々甘えたくて来てたこともあいまって、もそもそとまーくんの腕の中に戻ってしまった。
「帰したくないけどね」
耳元で囁かれ、胸がキュッとなる。
俺だって帰りたいわけじゃないんだよ。
ずっと一緒にいたいもん。
でも、なぜだか「やる気がないだろ」と言った本郷の顔がチラつくんだよな。
黙ってる俺の唇にまーくんの唇が触れた。
ドキドキしてまーくんの着てるトレーナーの裾を握りしめる。
「ん、…ふっ」
まーくんの手が制服のシャツの中に入ってきた。
もうそれだけで頭がクラクラしてしまう。
トレーナーの裾では足りなくなり、背中に腕を回してしがみつく。
と、誰かが階段をあがってくる音がした。
ハッとしてまるで一時停止ボタンを押したみたいに二人で固まった。
足音はドアの前を通り過ぎ、奥へ向かっていったからゆうくんのようだ。俺たちは顔を見合わせて、もう一度ドアの外を伺った。
まーくんの手がまた動き出したと思ったら、再びドタドタ足音が戻ってきて「母ちゃん!」と下に声をかけながら階段をおりていった。
「落ち着かないなぁ」
どうせまたそのうちあがってくると思うと、なんだかぐったりしてしまって、俺はおとなしく家に帰ることにした。
まーくんのしょんぼり顔は心痛かったけど、さすがに今日は疲れちゃったからね。
ごめんね、まーくん。