文化祭実行委員の応援に行っていた潤くんと西畑が戻ってきて、みんなで焼肉屋さんに行った。
言葉の通り、まーくんが俺の分までせっせと焼いてくれる。ちゃあんと脂っこいのをよけて。
俺がそれをちびちび食べるからどんどんお皿にたまって、横から「冷めちまうだろっ」と箸をのばす生田がまーくんに怒られてた。

トイレにたったまーくんを見届けるやいなや、生田が擦りよってきた。
「なあなぁ、いつから付き合ってんの。ていうかさぁ、おまえ男のがいい人なわけ?」
「別に…そういうわけじゃないけど」
「だって先輩と付き合ってるんだろ。付き合うってそういう意味だよな。好きになるの、男ってことじゃねぇの?」
「斗真!やめろって」
向かいに座ってた潤くんが止めに入ってくれたけど、生田は「なあなぁ」と譲らない。

「違うし。女の子とも付き合ったことあるし」

ブブゥと飲んでた炭酸を生田が吹き出した。
「うわ、汚ぇ!」
潤くんの隣りにいた小栗くんが、驚いた表情のまま固まってた生田の肩をどついた。
「マジか!?」
我に返った生田が叫ぶ。
え、そんな驚くところ?俺だってそれくらいの経験あるもん。…あんまし続かなかったけど。
「え、え、いつ、いつ?」
「…幼稚園」
「はぁ!?それカウントすんのかよ!」
「中学でもあったもん!」
生田はじめ、潤くんまでびっくり顔で俺を見た。
なんだよぉ、失礼しちゃうな。
「じゃあなんで…。あ、じゃあ先輩が男のがいい人ってこと?それに引きずられてるわけ?だからって越えられる壁じゃないよな。え?どゆこと?」
生田は混乱してるみたいで、ぶつぶつ自問自答しだした。
俺だってうまく説明できないよ。
まーくんはまーくん。男とか女とか関係なくて、ただまーくんだからいいんだとしか言えない。

小栗くんが俺をまたじろじろ見る。
「確かにおまえは可愛い。けど、女の子に感じる可愛いとはちょっと違うかな。可愛いから手を出すかと言われれば、それはナイな」
そうなの?ってじっと見上げたら
「………なんか自信無くなるな。そんな目で見んなよ。」
なにそれ。わけわかんない。
なんでか赤くなった小栗くんが生田に言った。
「会長が男好きなのかはわからんが、少なくともこいつの事好きなのは今に始まったことじゃない。もうずっとそうだっただろ」
潤くんがうんうん頷く。
わかってなかったのはおまえだけと言われて、生田は「そうなの?そうだったのぉ!?」と更に混乱してしまった。

「なぁに話してんの、盛り上がってるね」

トイレから戻ってきたまーくんに慌てた生田が炭酸ひっくり返して大騒ぎになった。