まーくんはニコニコしながら菅田の元へ行って、その手を肩にのせた。
「菅田くん、なかなか情熱的なんだね!でもさぁ、ちょっと冷静になろうか」
戸惑う菅田を置き去りにして、ずんずんステージまでやって来ると、へたりこんでいる俺の目の前にしゃがんだ。
俺も俺に腕を掴まれてる生田も、そんなまーくんを見て固まる。
「なに斗真の腕なんかにくっついてんの」
まーくんは俺と生田を引き剥がし、生田に向かってシッシッと追い払う仕草をした。
見慣れた黒いオーラ。
え、てことは…。
「なんでこうもいろんなものになるかなぁ?」
そう言って、まーくんは器用にうさぎの頭を取り外してしまった。
「あっ、ちょっと…」
「幽霊だけじゃ足んないの?」
「いや、こま、困るって」
いつからバレてた?
中身が由里子ちゃんではないと知った会場は「えええーー!」の大合唱。
俺はいたたまれなくて、まさに穴があったら入りたい気分で視界が滲む。
そんな俺にはお構いなしに、まーくんは俺の脇に手を入れるとひょいと抱き上げた。
そのまままるで米袋みたいに肩にかついでステージをおりる。
これで俺がすごく小さかったら、飼い主に抱っこされたうさぎそのものだ。
「まーくん、まーくん」
小声で呼んでみるけど、それには答えない。
まーくんはぼう然としている菅田のところへ戻り、驚きの言葉を放った。
「悪いけどこの子は俺のだから」
耳を疑った。
ええぇえぇ!なに言っちゃってんの!?
そんなことバラしてどうすんだよ。
まーくんの発言に対して起こったざわめきは、まるで水面の波紋のように会場全体に広がっていく。
うわうわうわ、どうしよう…。
菅田は力なくうつむいた。
「気がつかなかった…。俺もまだまだやな」
「見分けられるようになったらまた道は開かれるよ!がんばれ青年」
まーくんはにこやかに、菅田の背中をたむたむたたいた。
そしてざわつく会場をぐるりと見渡し、
「ま、そういうことだから!」
そう笑顔で手を振ると会場をあとにした。
俺はといえば、肩にかつがれたままパニック状態で、脳みそが冷や汗をダラダラかいていた。
これからどうなる?
どんな目で見られるんだ俺たち。
ああ、あんなに悩んでたのに。こんなにあっさり暴露されるなんて。
モヤモヤしてた俺はなんだったんだ。
「なんだよ、なんで言ったんだよ!みんなに知られちゃったじゃん。これからどうすんだよ」
俺は堪らず歯噛みしながら、まーくんの肩の上でバタバタ暴れた。