軽音部に行くと、なんだかいつもと雰囲気が違う。菅田のそばには茶髪の女子が陣取っていて、ほかの女子は遠慮がちに話に加わってるという感じだ。
「二宮くん」
菅田が優しい笑顔を向けるから笑い返したけど、速攻茶髪女子に睨まれる。
何なに、なんなの。怖いんですけど。
あまりに感じ悪いので、テキトーな理由をつけて菅田を連れ出した。
「あの子なに?やっぱ彼女なの?」
プリント渡しながらチラリと部室を伺う。
菅田はのんびり笑って、最新の彼女だと言った。そして圧が強くてほかの女子がドン引きなんだって。
「へえぇ。いいの、それで」
「まぁ、それも個性だしね」
そう言って特に気にする様子もない。
こういう時、菅田のことがわからなくなる。
よくよく考えたら、恋人独り占めするのは当たり前なんだから、茶髪女子のほうがフツーなんじゃないか?
ほかの女子は結局ただのファンなのかもしれない。てか、菅田はホントはどう思ってるんだろう。もしかして…
「菅田はさぁ…」
「二宮くん、由里子ちゃんと付き合ってる?」
「えええええ!」
「由里子ちゃんは違うって言うんだけど」
「ちが、ちが、ちがう」
ほんとに噂になってんだ。
俺は早口で事情をまくしたてた。
こんな噂、まーくんはどう思うかな。
あの頼りない映研部部長の動画に女子幽霊役で出る事と、どっちがヤバいだろう?
どっちもイヤな顔しそうだし、噂なんか信じない気もする。
「やっぱり由里子ちゃんの言う通りなんだねぇ。ハンカチ貰ったってすごくうれしそうにしてたんだけどな〜」
そう言って窓越しに空を眺めていた菅田が、ふいと俺に向き直り視線を合わせてきた。
「由里子ちゃん、いい子だよ」
え、なにそれ。
急に真面目な顔して、驚くじゃん。
「何言ってんの??あの人、相葉くんのことが好きなんだよ?」
思わず笑って答えると、菅田はちょっと目を見張ってから
「そっか」
と笑った。