家に帰り着くと、急いで幼虫をカーテンにくっつけた。幼虫は想像してたより動き回る。
よく見かけるセミのぬけがらは、もちろん動かないからなんだか不思議。
「よく動くね」
「いい場所探してるんだよ、きっと」
背中にはりつくかずくんの声が耳をくすぐる。
俺の母ちゃんに念入りにつけられた虫除けスプレーの匂いがした。
いつもの匂いじゃなくて残念。
かずくんはなんか甘いいい匂いがするんだ。
「あ…、止まった」
かずくんの声に、慌ててセミを見る。
そこから1時間くらい2人でくっついたまま、カメラ抱えてただただ見守った。
背中が割れて、薄緑の白いものが出てくる。
「これが、セミ?茶色くない…」
かずくんの声が少しかすれてる。
チラリと振り返ると、あのキレイな茶色の瞳をまん丸にして見入ってた。
俺はしばらくそんなかずくんを見つめてた。
出てきたセミはほとんど白で、とっても神秘的。見た目は弱々しいのにどこか力強くて。
だんだん茶色くなってきた姿は、ようやくいつものアブラゼミだった。
鳴いて飛ぶと捕まえる自信がないから、動きが鈍いうちに外に出そうと触ったら
ジジジジジ!
「うわわわわっ」
「ぎゃー!」
慌てて外に逃がしたけど、びっくりしたかずくんは半泣きだ。
俺も内心、心臓バックバクだったけど平気なフリでかずくんの頭を撫でてあげた。
うん!
カンペキじゃない?
あとは写真印刷して、
レポート仕上げるだけだ!