家でも誕生日祝いをしてもらった。
高校生にもなって、お誕生日おめでとうのケーキとか恥ずかしくてしょうがない。
けどまぁ、母さんたちの食べる口実になってるんだろうから、いいんだけどさ。




翌日は梅雨らしい空模様で、自転車というわけにもいかず、バス停まで歩く。
目の前には傘をさすまーくんの背中。
今日は朝補習ないんだって、「サボりじゃないかんな!」と言ってた。
3年生は大変だな…。

昨日同い年になって追いついたけど、やっぱり俺とまーくんの差は縮まない。
やっぱり一歩前を行ってるよね。
何時だってそう。
いつだって俺はまーくんの背中に隠れてて。
大きな背中が大好きで、心地よくて。

でも最近は思うんだ。
すぐ横にならんで歩きたいって。
いつかそんな日が来るかな。


うつむき加減で歩いていたら、目の前にスっと手が差しだされた。
「ほら、バスに乗り遅れるよ」
赤くなるほっぺたを意識しながら、「んっ」と手を繋いだ。
ならんで、ほんの少しだけ後ろを歩く。
「なぁに、ニヤニヤしてんの」
「してないし!手が濡れるなぁ、もう」
口から勝手に可愛くない言葉が出ちゃう。
まーくんは「へーきへーき」って笑ってる。

なんだか指の先まで温かいものが満ちていくみたいだ。温かくて愛しいなにかが。
ずっとこうしていたい。
こんなふうに歩いていきたいな。


もうすぐバス停だというのに、急にまーくんが顔を近づけてきた。
傘がぶつかって水しぶきが肩を濡らした。
その傘の影に隠れて、一瞬のかすめるようなキス。

「ちょっと、まーく…」
「あ、バスが来た!」

手を繋いだまま2人で走る。
俺はわぁわぁ文句を言って、まーくんはひゃひゃひゃと笑ってる。

これでいいんだ。
これが俺たちだ!

















おしまいっ