帰り道は雨も上がって、雲の切れ間から月が見え隠れしてる。
「あぁ〜食った食った」
まーくんはおなかをさすりながら、テロテロ歩く俺の手を引っぱった。
さすがしょうちゃんちのご馳走はハンパない。
俺もいつもの2割増くらい食べたけど、こいつは倍くらい食べてるからね。
食べ盛りとはいえ、この細い身体のどこに入ってくんだか。だから俺よかデカくなったのかなぁ?
口数の少ない俺に
「あ、ごめん、腕痛かった?」
まーくんが真顔になって聞いてくる。
俺は黙って首を振った。
そのまま2人で手を繋いで歩く。
「ちょっと疲れちゃったね?」
優しい声に、俺は腕に寄りかかった。
まーくんはまだ包帯の取れない手でよしよししてくれる。
家に着く前に俺は立ち止まった。
「まーくん」
ん?と俺を見つめるまーくんの顔にわずかに緊張が走るのがわかる。
「今日シよっか!」
まーくんは一瞬キョトンとした後、明らかに狼狽えた。
「え?え?スルって…ど、どういうスル??」
「どういうって、ほかにあんの?」
「や、ほらゲームでしたぁとか、言わない?」
そういう事すぐ言いそうって、俺ってそんな?
不満顔でまーくんに抱きついた。
まーくんはオロオロしながら俺を抱きとめて言った。
「今日から一人で寝るって言われるかと思ったから…」
うん。
俺もそうするつもりだったよ。
今日は言わなきゃ。
もう大丈夫だって。
まーくんゆっくり寝てねって。
俺のワガママにこれ以上縛りつけちゃダメだって、自分でもよくわかってたから。
苦しくて。
けど、なんか気が変わったっていうか。
離れてることもいいのかな。
離れてるから一緒だとうれしいのかな。
ギチギチにくっついてると顔もよく見えない。
離れて寂しかったらまたくっつけばいいよね。
だってまーくんはいつだってそこにいてくれるんだから。
そう考えたら大丈夫な気がしたんだ。
だったら、うぅんとくっつこう。
そう究極にくっついてしまえって思ったんだ。