頬を熱くした俺を見て、まーくんの眉がピクと反応する。
「なに、なんかあったの?」
まさかおまえが不足してるなんて考え、知られたら最後、一生言われる。
やだやだ、やだよ、冗談じゃない。
「さっき本屋に行って、そんで…」
慌てて話題を変えようと口にしたものの。
本郷の50万の事話すと大野さんの絵を見たことも話さなきゃならないって気がついた。
内緒で行ったのにダメじゃん。
別に悪いことしたわけじゃないんだけど、ゼッタイ機嫌悪くなるよね。それもやだ。
少なくとも今はやだ。
「そんで?」
「……漫画、買った。2冊」
まーくんは「あぁ、それ」って、本屋の袋を見て笑った。ホッとした俺は、自分からまーくんの手を握る。
「帰ろっ」
まーくんの手があったかいのが気持ちよくて、繋いだまままーくんちまで帰ってきた。
離しがたくてノロノロ歩いてたら、それに気づいたまーくんが「寄ってく?」と聞いてくれた。うれしくて顔がにやけちゃう。
けど、いざ部屋に入ると、
「今日のテスト、ヤバかった〜」
とか言いながら、ベッドにひっくり返るまーくんにドギマギする。
だって、あのベッド。こないだ…。
あんなコトやこんなコトが頭によみがえって、もうどこ見ていいのかわからなくなる。
「えと、これ読むならおいてくし、えと、」
本の袋を持って挙動不審な俺。
「かず」
呼ばれておずおずまーくんを見る。
起き上がったまーくんはひどく真面目な顔で
「ここ、来て」
と両手を広げた。
俺の心拍数は一気に最高回数を叩き出す。
それでも身体は勝手に動いて、俺はまーくんの前に立っていた。
優しく手をとられ、膝の上に抱き上げられる。
俺はただもうぎゅううっと強くしがみついた。
その時やっと、「まーくん不足」の意味がわかった気がした。
そうか、そういうことだったんだ?
俺は自分からまーくんにキスをした。