「あっ、ごめんっ」

赤面したのを見て俺は慌てた。
聞いてはいけないことだったかもしれない。

「余計なこと言っちゃって…」

そんな俺を見て本郷はそっぽを向いた。
「別に。欲しいものがあるからバイトしてるだけだ」
「あ…そなの?」
ほっとして「それならいいんだ」って笑ったら、更に赤くなってる。
なんか可愛かったから、
「よっぽど高いものなんだねっ」
と軽い口調で続けた。
するとキュッとこちらを向いて、手のひらを俺の目の前に突き出してた。

「う、わ…」
「50万!」

びっくりしたよ、もう。
あ、その手は50の5なのね……って。
あれ?50万?
どっかでこういう話聞かなかったっけ。

「それってまさか絵とかじゃ…」

目の前にあった手のひらが急に引っ込められ、ものスゴイ目で見返された。
「おまえに関係ない」
言い捨てて、本郷は足早にカウンターの中に戻ってしまった。


…………マジで?

だって50万だよ??
あいつ、大野さんの大ファンなのかな。
だからってそんな大金出して買う?
いやいやないでしょ。
俺ら高校生だよ?


ぐるぐる考えながら駅前にたどり着く。
目の前の塾から大勢の学生が出てきた。
そんな人の流れをぼんやり眺めてると、不意にまーくんの姿が目に飛び込んできた。

不思議…。

周りの学生たちはみんな無色で、ただ音もなく流れていくのに、まーくんだけが色鮮やかに浮かび上がっているみたいに見える。
そんななか、ふと顔を上げたまーくんと目が合った。目尻に皺を寄せて、文字通り花が咲くような笑顔になる。
胸が勝手にときめいた。


「かず!」

駆け寄ってくるのに、俺は動けないでいた。
抱きついちゃいそうだったから。
そんな俺には構わずあっさり肩を抱かれた。
「なになに?お迎え?」
「そんなんじゃないし。ぐーぜんだし」
可愛くないこと言ってもきっとバレバレ。
まーくんはご機嫌で、俺の髪の毛に鼻先を埋めてきて、耳にちゅっと音が響いた。
「ちょっ!こんなとこでっ」
「だいじょぶ、だいじょぶ」

もう!なにが大丈夫なんだか。
でも今日は大人しくされるがままな俺。
なんかくっついていたくて。
なんだろ、まーくん不足?
ほぼ毎日顔を合わせてんのにそんな事あるのかな。……なんて。自分の考えに恥ずかしくなってしまった。






















*****

休校中の我が家に1本の電話が。
「くじ引きで〇✕委員に決まりました。つきましては、5月△日に集まって委員長副委員長を決めたいと思います」
…………∑( ̄Д ̄;)!!ゲゲ
そういうこと、すっかり忘れてた。
PTAは動いていたのね。さすがです。