かずくんは大丈夫だろうか。
元気になったかな。
あんまり気になったから、朝ごはんの後、ママが弟のゆうくんにかかりきりになってる隙に、こっそり家を出た。転ぶと大変だから走るなと言われているけど、気がせいて早足になる。
ごく近くのかずくんちにはすぐ着いた。でもピンポンする勇気が出ない。しかたなく駐車場の方から庭を覗いてみた。
すると、2階からなにかふわふわと落ちてくる。なんだろって見上げたら、梅雨明けの濃い青空に白い紙ヒコーキがたよりなく飛んでいた。そしてそのまま庭の芝生の上に着陸。紙ヒコーキの翼には、黄色いお星様が描いてあった。
(あ!)
いつか俺が作ってあげたやつだ。
思わず庭に足を踏み入れたら、家の中から小さな足音がして、かずくんが飛び出してきた。
紙ヒコーキを拾ったかずくんは、ふわっとこっちに視線を向けて、ビクッとして固まった。
突然庭に人がいたら、そりゃ驚くよね。慌てて指を立てて、しぃー!ってする。
「まーくん…?」
かずくんは小さな声で囁くと、小走りで寄ってきた。
「こないだはごめんね」
しょんぼりしてるかずくんの頭をよしよしする。はにかんだ笑顔に、胸がキュッとなる。
「あのね…」
かずくんは紙ヒコーキをいじいじしながら言った。
「僕、なんかいろいろ、忘れちゃったみたいなんだ。よくわかんないんだけど」
どうしたらいい?って見上げてくる。
「大丈夫だよ。忘れていいんだよ、きっと」
「でもね、なんか…大事なこと、忘れてる気がするの」
そうだよ。大事な約束したんだよ。かずくんは俺のお嫁さんになるんだから。
言いたい。すごく言いたい。
だから口から出ないように歯を食いしばった。
あんなかずくんはもう見たくない。
俺は、固定されてない右手でかずくんの手を黙って握った。
かずくんは甘えるように腕を絡めてくる。
「大事なことならいつか思い出せるよ」
かずくんにそう言いながら、自分自身に言い聞かせてた。
そうだ。大丈夫。だって俺らは赤い糸で繋がってるんだもの。
そのまま、庭のすみっこで2人で肩を寄せあって座り込んでいたら、俺のママが現れた。
ゆうくんを小脇に抱えて、汗だくでコワイ顔をしている。ヤバい…。
「やっぱりここだったのね!」
まったくおまえは!って、ガッツリ怒られた。
こういう時のママは、マジでヤバい。
俺はかずくんを背中に庇いながら、ひたすら謝った。外に出てきたかずくんのママも驚いてた。
それにしても、なんでかずくんちにいるって、ママにはわかったんだろ??
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10月になったのに暑いですね(¯―¯٥)
ワタクシ、そういうお年頃なのか(←更年…ゲフゲフ)毎日汗だくで困ってマス。
前世はきっとジョウロだったに違いない。
皆さまも季節の変わり目、風邪などひかれませぬようお気を付けて('∀`)