注意 以下完全ネタバレ注意







【Waveとパーティー!?】



それから数時間後……。


私は、マネージャーである山田さんの車でテレビ局に向かっていた。



(う……ちょっと、具合悪いかも……)



京介くんへのバレンタインチョコを作り終えたらのは、もう仕事への準備をしなければならない時間で。


結局、徹夜になってしまったからか、車に揺られていると少し気分が悪くなった……。



山田)「どうかしたのか?」



信号で足止めされたタイミングで、山田さんが私をじっと見た。



(マズい、ごまかさなきゃ……)



プライベートなことで仕事に支障を来したなんて、怒られてしまう。


慌てて、私は配る用のチョコの紙袋から山田さんの分を取りだした。



△△)「や、山田さん……これ」

山田)「え?」

△△)「いつも、本当にお世話になってますし……」



山田さんがチョコを受け取ったところで、車が動き出した。


ハンドルを握りながら、不思議そうな顔になる山田さん。



山田)「しかし何故、今日に限って……?」

△△)「え……だって今日は、バレンタインですよ?」

山田)「そうか、バレンタイン……」



つぶやいて、フッと山田さんは前を向いたまま、かすかに笑った。



(山田さん、なんか嬉しそう……)



普段は見られない優しい顔になった山田さんの顔を盗み見て、私は嬉しくなった。


少しだけ、山田さんにも手作りした方が良かったかな、なんて思って。



(……京介くんも、喜んでくれるかな……)



私は、京介くんへのチョコをいれているカバンを、ぎゅっと抱きしめた。





*****


桃瀬)「あら、アタシにもくれるの?」



楽屋に着いてすぐ、メイクのモモちゃんを見つけて私はチョコを手渡した。


モモちゃんは、チョコを受け取ると嬉しそうに微笑んだ。


それから、チラリと楽屋の隅の山田さんに目をやってから私に顔を寄せた。



桃瀬)「それで、本命チョコは、ちゃんと準備出来た?」

△△)「え?!」

(何で? モモちゃんには話してなかったのに……)



ビックリして、モモちゃんを思わず見る。


するとモモちゃんは、悪戯っぽく笑って私の頭を撫でてきた。



△△)「モ、モモちゃん?」

桃瀬)「いい? この業界で、メイクは何でもお見通しなのよ?」

△△)「そうなの?!」

桃瀬)「ええ、だから一目で分かったわ。
そこの徹平ちゃんが、チョコを受け取って大喜びしたってことも、ね



突然、名指しで言われてギョッとした顔になる山田さん。



山田)「別に、大喜びは……」

桃瀬)「ふーん、嬉しくなかったんだ?」

山田)「いや、そういうわけでは……」



山田さんは困ったように、視線を泳がせると大きな咳払いをして、



山田)「とにかく、だ。俺は先に挨拶してくるから、後は任せた」



肩を怒らせたまま部屋を出ていってしまった。


音を立てて閉まったドアを目で確認して、モモちゃんは肩をすくめる。



桃瀬)「まったく、素直じゃないのも困ったものよねー。
さて、そんな寝不足の顔しちゃってるってことは、チョコは用意出来たのね?

△△)「う、うん……」

(寝てないのも、バレてたんだ……
あれ? もしかして、その話をするために山田さんを追いだしたの……?)



モモちゃんの、勘の鋭さに目を丸くしながらも私は頷いて、



△△)「昨日は遅かったし、今日も朝から仕事だったから寝れなかったけど……
ちゃんとチョコの用意は、出来たよ?



そう素直に白状した。


すると、モモちゃんはメイク道具を手に取って嬉しそうな顔になる。



桃瀬)「やっぱり頑張る女の子は応援したくなっちゃう。
と、言うわけで今から、その寝不足の顔をごまかすわよ!」



手際良くメイクを始めたモモちゃんは、
ふいに鏡越しに私をじっと見た。



△△)「何、モモちゃん?」

桃瀬)「うん? せっかくだから、今日は△△ちゃんが、ちゃんとチョコを渡せるように
帰りにもメイクしてあげようと思ったんだけど……迷っちゃって


(迷う……?)



嬉しくなりながらも、モモちゃんの『迷う』という言葉の意味が分からなくて、私は首を傾げた。



桃瀬)「△△ちゃんが本命チョコを渡す相手が分からないから、
メイクをどういう系統にしたら良いのか迷うのよ。△△ちゃんは、どうしたい?


(メイクか……どうしよう?)



          A カワイイ系
合格  B キレイ系



△△)「うーん……じゃあ、キレイ系かな?」

(京介くんだったら、きっとキレイ系だよね……)



いつも大人っぽい雰囲気の京介くん。


その隣に立つと思ったら、おかしくないキレイ系だと思った。



△△)「モモちゃん、バッチリ大人っぽいキレイ系のメイクをお願いします!」



少し考えてから告げるとモモちゃんは、満面の笑みを浮かべた。



桃瀬)「任せて! アタシが完璧なキレイ系に仕上げてあげるから」



話ながらも、素早く仕事用のメイクをこなしていくモモちゃん。


ふわふわと柔らかいパフを顔にすべらせながら、



桃瀬)「キレイ系なら、やっぱりアップヘアにしたいんだけど……
△△ちゃん、私物でバレッタは持ってる?

△△)「確か、持って……あ、今日は持ってない……」



チョコに気を取られて、普段は持っているアクセサリー類を入れているポーチを
家に置いて来てしまったことを思い出して、うなだれる。



(せっかく、モモちゃんがメイクしてくれることになったのに……)

△△)「撮影の後で、少しだけ時間があるんだけど……その時に買いに行くのでも平気かな?」

桃瀬)「もちろん。よし、出来た!それじゃあまた後でね、
その時はもっと手の込んだメイクしてあげるから



モモちゃんは私のメイクを完成させると、慌ただしく道具を片付けて部屋を飛び出していった。



△△)「……今日は頑張ろう……」



鏡に映る仕事用のメイクの自分を見つめて、私は大きく頷いた。





*****


たくさんあったチョコも、ほとんど配り終えて後はWaveの分だけになった。



(……何か、緊張してきた……)



そして、私は残りのチョコを渡すためにWaveの楽屋の前に立っていた。


すっかり軽くなった紙袋を手に、深呼吸をして楽屋をノックした。


すると、返事の代わりに勢いよく扉が開いて……



△△)「えっ?!」



私は避けきれずに、ドアに額をぶつけてしまった。



(い、痛い……!)



想定外の痛さに言葉が出なくて、私は思わず……



           A  相手を睨んだ
合格   B  無言でむくれた



ズキズキと痛む額を押さえて、私は何も言わないかわりにむくれてしまった。


と、目の前には顔を真っ青にした翔くんが立っていて、



 翔  )「うわ、え、あ……大丈夫?!」



ものすごく、うろたえてしまった。と、その横から義人くんが現れて、



義人)「……」



何も言わずに私の額に手を伸ばした。



(え、義人くん……?)



義人くんは、額を押さえる私の手を取って、ぶつけた所に触れようとした。



??)「義人っ!」



その瞬間、慌てたような大声が聞こえて、私の前に立っていた義人くんが振り返った。



(今の声って、京介くん……?)



思わず声の聞こえた方に目をやると、京介くんがこちらに向かってきていた。


その表情が、いつもの微笑みなのにどこか焦ったように見えて、私は首をかしげた。



△△)「あの、京介くん、どうし……」



『どうしたの?』と続けようとした私の言葉は、冷たい京介くんの手が私の額に当てられた事で
途切れてしまった。



(わ……!)


京介)「良かった、傷はないみたいだ……」



ホッとしたような声の後で、サッと京介くんの手が離れていった。



京介)「どうしたの? 楽屋のドアが外開きって分かってたよね?」



京介くんが言うように、扉のことは知っていたはずなのに、緊張のあまりに近づきすぎてしまって、
やらかしてしまった……。普段は絶対にやらないミスに、情けない気持ちになる。



(……何か、恥ずかしくなってきた)



まだ、かすかに痛む額を押さえて、私は頭を下げた。



△△)「本当にごめんなさい……」

京介)「……とりあえず、中に入れば?」



京介くんに腕を引かれて、私はWaveの楽屋に入った。



(う……予想より、すごい……)



楽屋に入った途端に目に飛び込んできたのは、そこかしこにチョコが入ってると見える紙袋や

段ボールが積まれている光景だった。それを見ると、前に『困る』と京介くんが言った理由が

分かる気がして、少しだけ気分が落ち込んできた。



(でも、せっかく渡しに来たんだし!)



へこむ気持ちを振り払って、私は紙袋からチョコを取りだして、



△△)「あの、良かったらコレ……」



おずおずとチョコをみんなに差し出すと、一番にチョコを受け取ったのは亮太くんだった。



亮太)「お、ありがとーん。ねぇ、これって本命?」

△△)「え?」

亮太)「ちぇっ、何だ、まーた義理チョコかー」

一磨)「亮太がごめんね、チョコ本当にありがとう」



優しい微笑みで受け取ってくれる、一磨さんに私は嬉しくなる。


義人くんにも手渡したところで、京介くんが私をじっと見ていることに気付いた。



(京介くん……?)



その視線が気になりながらも、京介くんの分の義理チョコを手渡した。



(本命はあるけど、みんながいる手前、ここで渡さないのも変だもんね)


△△)「はい、京介くん」

京介)「……ま、これはこれでもらっとく」



意味深に言って、京介くんは余裕めいた表情で微笑んだ。


その微笑みの威力から、慌てて目を反らして私は翔くんに近づいた。



△△)「えっと……翔くんのチョコは、後で渡すね?」

亮太)「え? なに、それって本命は翔ってこと?」



と、目をキラキラさせて、亮太くんが私と翔くんを交互に見る。



△△)「え? えっと」



急に突っ込まれたことに慌てた瞬間、こっちを見ていた京介くんと一瞬だけ視線が絡んだ気がした。


すぐに、京介くんを見たけれど今度は視線が合わなくて、私は首を傾げる。



(あれ、気のせい……?)



不思議に思う私に向かって、亮太くんが更に食い下がった。



亮太)「あれ、黙っちゃった、ってことは……本当に翔が本命なんだ?!」

△△)「え、えっと、本命っていうか……あの……」



私は京介くんを気にしながら、慌てて答えた。



△△)「せっかくだし、誕生日パーティーで渡したかったから……」



翔くんに渡すチョコは、誕生日ということを知ってから、みんなの義理チョコより少しいいものを
買いなおしていた。



(だから、今夜の誕生日パーティーでプレゼントしたほうがいいかな、と思ってたんだけど……)



すると、私の言葉を聞いた途端に、翔くんの目が輝いた。



翔  )「△△ちゃん、今日のパーティーに来てくれるの?!」



すごく嬉しそうな笑顔になる翔くん。



△△)「もちろん、パーティー楽しみにしてるね!」



私も嬉しくなって、笑顔で大きく頷き返した。


その瞬間、勢いがよすぎたのか、一瞬だけ足元の力が抜けそうになった。



(どうしよう、立ちくらみだ……)



少し血の気が引くのを感じながらも、私は精一杯の笑顔を作って、



△△)「それじゃあ、また後で……失礼しました」



慌てて、Waveの楽屋を後にした……。





*****


(やっぱり、寝てないからかな……)



ついさっきの、一瞬の立ちくらみを気にしながら私は廊下を歩いていた。



??)「△△ちゃん」



と、京介くんが走ってきて私の隣に並んだ。



△△)「え、京介くん?」

京介)「顔色良くないけど、大丈夫?」


(え……気付いてたの?)



モモちゃんのメイクの腕は完璧で、誰にも体調が悪いことはバレていなかったのに、
あっさりと見破られたことに驚きが隠せない。



(でも、さすがにチョコのせいで徹夜だなんて言えないよ……)


△△)「うん、大丈夫! 実はついさっきまで、うたたねしちゃってて……寝起きだから、かな?」



納得のいっていない表情の京介くんを見た瞬間、ふいに不安が頭をよぎった。



(どうしよう、私、チョコのことばかりで京介くんの予定を確認してない……!)



今になって気付いた重要なことに、私は内心で焦りながら口を開いた。



△△)「そういえば、京介くんも今夜の翔くんの誕生日パーティーに行くの?」

京介)「ああ、行くけど?」

△△)「そっか……」


(良かった……。タイミングあえば、その時にでも渡せたらいいなぁ……)


京介)「あのさ、翔のチョコだけど……」

△△)「あ、ちょっと急ぎの用事があるから、また後で!」



ちょうど自分の楽屋に着いたのをいいことに、私は楽屋に逃げ込んだ。


長く話していると、顔色が本当に悪いことがバレてしまいそうで。


それ以外に、私が本命チョコを渡そうとしている相手が
京介くんだと気付かれてしまいそうだったから……。



京介)「ねえ……あんまり、無理しないで?」



だけど、閉めたドアの向こうから、そんな京介くんの気遣う声が聞こえて。


私は、その優しさに顔を赤くして扉の前でしゃがみこんでしまった……。





*****


数分後、楽屋に戻ってきた京介は考え込んだ表情でソファーに腰掛けていた。


フッと楽屋の隅で亮太とはしゃぐ翔を複雑そうな眼差しで一瞥して、



京介)「まさか……本当に翔に渡すんじゃない、よな……?」



ぼそり、と小さな声でつぶやく京介。



一磨)「京介、今なんか言ったか?」



その瞬間に、隣を通りかかった一磨に聞かれた京介は、あいまいな微笑みを浮かべて首を横に振ってみせたのだった。