事件は解決したものの…
主人公、頑張ります。
以下完全ネタバレ
《専属SP
後藤 誠二》事件後、後藤さんは入院することになった。
大きな外傷はないものの、検査入院が必要と判断されたからだ。
主) 「後藤さんの病室は…」
桂木さんからもらったメモを確認していると、後ろから名前を呼ばれた。
???) 「△△さん」
主) 「あ、石神さん!」
石神) 「…奇遇ですね」
「後藤のお見舞いですか?」
主) 「はい。検査結果に異常がなかった事で、もう面会も出来るって聞いたので…」
「石神さんも、お見舞いですか?」
石神) 「ええ。後藤の見舞いなど、考えもしませんでしたけど」
主) 「どうしてですか?」
石神) 「敵に捕まるなどという失態は犯さない男だと思っていましたから」
主) 「それは…私が足を引っ張ってしまったので…」
石神) 「まあ、そうでしょうね」
「けれど…そう悪いことだったとは思いませんよ」
主) 「え?」
石神) 「後藤にとっては、いい経験になったでしょう」
「今回は結果的に無事だったので、よしとします」 ←
クイッ軽率な行動を咎められるかと思ったけれど、石神さんは何も言わなかった。
(石神さんにも、お世話になってばっかりだな…)
自分の不甲斐なさを反省しながら、私は石神さんと病室に向かうエレベーターに乗った。
*****
石神さんが5階のボタンを押す。
主) 「石神さん」
石神) 「はい?」
石神さんは視線だけで振り返った。
主) 「この前、後藤さんを公安に誘ったのは石神さんだって言ってましたよね?」
石神) 「…そうですね」
主) 「実はその話、昴さんからも聞いてたんです…」
石神) 「全く…、よくしゃべる男です」
「どんな風に聞きましたか?」
主) 「…全てを捨てられる人は公安に向いているからって…」
石神) 「えぇ。最高の死に場所を用意してやる…と言ったんです」
主) 「……」
石神) 「しかし、そう言いましたが、そんな生き方を変えさせる為に引き抜きました」
「危険な場所にいてこそ、気付くものがあると思い…」
主) 「…後藤さんは、何か気付いたんでしょうか」
石神) 「そうですね。最近は捨て鉢な目をしなくなりましたから」
主) 「あ、それ昴さんも同じようなことを言ってました…」
石神) 「フッ…一柳もあれでいて、後藤を気に掛けているんですね」 ←
クイッ「後藤が『一番危険な現場にいてこそ、守れる命がある』」
「『今度こそ誰も傷つけさせない』と言った時には…驚きましたよ」
主) 「後藤さんがそんなことを言ったんですか?」
石神) 「貴女と上海で会って、後藤も変わってきたと前にお話ししましたね」
「それから、またしばらく経った頃の話です」
「あの後藤から、『守る』という言葉が出たのは大きな変化でした」
ですが…と、石神さんは私から視線を外す。
石神) 「やはり、まだどこか自分はどうなってもいいと思っている節がありますね」
「それだけは、なかなか抜けないようです」
エレベーターが到着する音がする。
石神) 「つまらない話を聞かせてしまいましたね」
「いきましょう」
主) 「はい…」
……アイツをいかせなければ…
あの時の後藤さんの声が耳に蘇る。
(後藤さんの考えを変えることって、もうできないのかな…)
(お願い…夏月さん、力を貸して…!)
夏月さんのお守りの入ったバッグに視線を向け…後藤さんの病室のドアを叩いた。
*****
後藤さんはベッドで本を読んでいた。
私たちが入ってくると顔をあげる。
後藤) 「石神さん…△△…」
石神) 「連れてきたわけじゃない。たまたま一緒になっただけだ」
後藤) 「…そう、ですか…」
主) 「身体の調子はどうですか?」
後藤) 「ああ、もうほとんどよくなった。ベッドにいるのが退屈なくらいだ」
石神) 「だが、顔はひどいものだな」
「まだ笑えないんじゃないのか?」 ←
クイッ後藤) 「そうですね。暫く傷跡も目立つって言われました」
腫れはひいたものの、後藤さんの顔には所々アザが残っている。
主) 「痛みはないんですか?」
後藤) 「少しは痛むが、問題はない」
「お祭りチームみたいにバカ笑いすることもないしな」
そう言う後藤さんは、いつもの後藤さんに戻っているように見えた。
石神) 「今回は犯人グループを一網打尽にできたこともあり、処分はない」
「戻ってきたら、山ほど報告書を書いてもらうことにはなるがな」
後藤) 「はい。今回は、本当にすみませんでした」
石神) 「同じミスは繰り返すな。…命の重みに差はないという意見は私も△△さんと同じだ」
主) 「え…」
後藤) 「……」 ←!
(石神さん、倉庫での会話をどこから聞いてたの!?)
石神) 「休暇だと思って、いまはゆっくり休め」
「…次に会う時までに、その情けない顔を治しておくんだな」 ←
クイッ後藤) 「はい」
石神) 「では、△△さん。私は仕事があるので、お先に失礼します」
主) 「あ、はい…」
石神) 「これは私と黒澤からの見舞いだ。△△さんとでも食べるといい」
小さな箱をテーブルの上に置いて、石神さんは病室を出ていった。
後藤) 「…石神さんたちの見舞いってなんだ?開けてくれ」
主) 「はい。あ、プリンです。このお店って、たしか平日でも行列ができるような有名店ですよ」
後藤) 「黒澤が並んだんだろう。アイツ、そういうのを嫌がらないヤツだから」
主) 「食べますか?」
後藤) 「そうだな…黒澤があとで感想を聞いてくるに決まってるし…」
2個入ってるプリンを取り出して、食べてみる。
主) 「あ、すごく美味しい…」
後藤) 「なかなかいけるな」
主) 「……」
後藤) 「……」
会話が途切れて、黙々とプリンを食べることになってしまった。
(話したいことや、話さなきゃいけないことはたくさんあるのに…)
切り出すタイミングをつかめずにいると、後藤さんが先に口を開いた。
後藤) 「事情聴取をされただろう?」
「大丈夫だったか?」
主) 「はい。石神さんと桂木さんも同席してくれたので…問題はありませんでした」
後藤) 「嫌な思いをしていないなら、よかった」
主) 「後藤さんの身体の方は本当に大丈夫なんですか?」
後藤) 「オレのことは気にするな」
「アンタが無事なら…それでいい…」
主) 「後藤さん…」
後藤) 「もう無茶はするな」
「…心臓に悪い」
主) 「はい…いろいろ面倒を掛けてしまって、すみませんでした」
後藤さんの目は暗い倉庫で見た瞳と似ていて…私は意を決して…
バッグの中からお守りを手にとった。
主) 「倉庫の中で、伝えたいことがあるって言ったのを覚えてますか?」
後藤) 「?」
「…ああ」
私は後藤さんの手に夏月さんのお守りをのせる。
後藤) 「夏月のお守り…」
主) 「このお守り、開けてみたことありますか?」
後藤) 「いや…」
主) 「開けて、中にはいっている紙を見てください」
後藤さんは訝るような顔をしながら、お守りを開ける。
そして、中にはいっている紙を開いて…その目を見開いた。
後藤) 「『誠二がどんな時でも無事でありますように』…」
「これは…夏月の字…」
主) 「昴さんから、夏月さんはこのお守りを肌身離さず持っていたと聞きました」
後藤) 「ああ…夏月はこのお守りをいつも大事そうに…」
主) 「お守りをずっと持っていたのは、自分のためじゃなかったんです。…後藤さんのためだったんですよ」
言っていて胸が痛くなるのがわかった。
夏月さんが後藤さんをどれだけ愛していたか…それを痛感する。
(そして…後藤さんも、同じように夏月さんを深く愛していた…)
主) 「夏月さんがどんな方だったのか、昴さんが教えてくれたんです」
後藤) 「一柳が?」
主) 「何も知らない私が、こんなこと言うのは図々しいってわかってます。でも……」
言葉にするのに勇気がいる。
後藤さんを怒らせるかもしれない…
後藤さんの夏月さんの関係に口を挟むようなこと言うべきじゃないかもしれない。
(でも…話すって決めたんだから…)
私は意を決して、口を開いた。
主) 「私が夏月さんの立場だったら…」
「自分が死んでも、好きな人には笑って幸せに生きてほしいって願うと思います」
「だから…後藤さん、自分は死んでもいいなんて…思わないでください」
後藤) 「……」
後藤さんは私の話を何も言わずに聞いていた。
夏月さんの文字を見つめ……その頬に一筋の涙が伝った。
ここでスチル
(後藤さん……)
主) 「後藤さんのことを大切に思っている人はたくさんいます」
「後藤さんがいなくなったら、悲しむ人がたくさんいます。そう…思いませんか?」
後藤) 「……オレには…わからない」
主) 「昴さんや石神さんも、後藤さんのことを心配しています」
「……私も後藤さんがいなくなるなんて、絶対に嫌だから…」
後藤) 「オレを…なぐさめようとしているのか?」
主) 「本当のことを言っているだけです」
「後藤さんが思っているよりも…みんな、後藤さんのことを心配してるんですよ」
後藤) 「……そう…か」
後藤さんがゆっくりと顔をあげる。
主) 「後藤さん…私…後藤さんのことが好きです」
後藤) 「!」
後藤さんが目を見開き、固まったように私の顔をじっと見た。
主) 「後藤さん、ぶっきらぼうに見えるのに優しくて、仲間思いで」
「ちょっとした約束を大事に守ってくれて…」
「そういう後藤さんのこと、気付いたらすごく好きになっていました」
後藤) 「△△…」
主) 「だから…後藤さんに命を粗末になんてしてほしくないです」
後藤さんの手に握られた夏月さんのお守り。
(後藤さんの心には…まだ夏月さんがいる…)
主) 「わかってます。後藤さんが私に優しくしてくれたのは、夏月さんに似ていたからですよね」
後藤) 「…お前、何を言ってるんだ?」
主) 「昴さんや長崎のお寺の住職さんに言われたことがあるんです。夏月さんにどこか似てるって」
後藤) 「…っ!」
主) 「それでも…嬉しかったです。後藤さんに優しくしてもらえて…傍にいられて」
後藤) 「△△、オレは…」
後藤さんが何か言おうとしたが、それきり黙ってしまった。
主) 「私、後藤さんの『またな』って言葉がすごく好きでした。次もまた会えるんだって思えたから」
私がそこまで言い終わった時、病室のドアがノックされた。
医者) 「後藤さん、調子はいかがですかー?」
看護士) 「検査のお時間ですよ」
主) 「あ、それじゃあ、私はそろそろ失礼します!お大事にしてください!」
後藤) 「おい!△△!!」
後藤さんの声が聞こえたけれど、振り返る勇気はなかった。
拒絶の言葉を聞くだけの強さが…いまの私にはなかった。