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捜査は深夜にまで及んだ。
今日は全員泊まり込みで、ソファーや自分の席で眠っている。
私と一沙はみんなが寝静まっている中、各事件の情報を見ていた。
主) 「それにしても世の中、いったい幾つの電話番号があるんでしょうね」
花) 「本当だな」
「割り振られた番号とは言え、下四桁なんか個性が出るよな」
主) 「そういえば、誘拐事件の被害者の履歴に替わった番号があったんですよ」
私はリストをめくって、一沙に見せた。
主) 「ほら。下四桁が同じ数字」
花) 「下四桁が同じ?」
一沙は番号を確認すると、一瞬で表情が消えた。
花) 「詐欺事件でも使われていた番号と同じだ」
主) 「えっ…」
花) 「この番号の携帯は他人名義のものだ」
主) 「被害者に共通してるのがこの番号?ってことはまさか…」
私は瑛希くんのパソコンから、強盗事件の被害者の携帯履歴を探った。
主) 「うそ…」
花) 「まさか、同じ番号か?」
主) 「花井さん、3つの事件の犯人は同一犯かも!」
花) 「詐欺事件の被害者に聞いてみる」
一沙はとっさに電話を掛け始めた。
花) 「夜分遅くに本当に申し訳ありません。警視庁の花井と申します」
「携帯の履歴でお尋ねしたいのですが」
「今から申し上げる番号の方について詳しく教えてください」
一沙は下四桁が同じ数字の電話番号を告げ、話を聞きだした。
話を終えて電話を切った一沙は厳しい顔つきだった。
花) 「犯人とはお見合い相談所で知り合ったらしい」
「結婚を約束させておきながら、金だけ取って逃げたらしい」
主) 「結婚詐欺…当初は単なる詐欺事件と聞いてましたが」
花) 「被害者もさすがに言いづらかったんだろう」
主) 「私、誘拐事件の被害者にも確認します」
花) 「俺は強盗事件の方に連絡する」
私たちはそれぞれの被害者に電話をした。
結果、やはり被害者と犯人の接点は同じお見合い相談所だった。
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京) 「出ました。犯人の名前、住所、勤め先、そして顔写真です」
京橋さんがパソコンを駆使して、犯人の身元を判明させた。
携帯の転売ルートと人物もすべて割り出した。
主) 「さすが元ハッカーですね!」
花) 「京橋、本当に助かった。さすが神と呼ばれただけある」
京) 「お二人とも、褒めてくださってるんでしょうか?」
主) 「もちろんです!京橋さん、すごすぎます!」
京) 「…やれやれ」
花) 「○○、犯人の勤務先に行くぞ!」
主) 「はい!」
私と一沙は犯人の出勤時刻に間に合わせるかのように、急いで二課を出た。
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会社の前で犯人の出勤を待つ。
写真の人物をつぶさに見ていると、遠くから似た男が現れた。
群衆に紛れたら見分けが付かないほど特徴がない男。
うつむき加減で背中を丸め、見るからに冴えない。
私と一沙は目で合図し合って、男に近づいた。
花) 「すみません、ちょっとお話をうかがわせてください」
一沙が警察手帳を見せると、男の顔が一瞬で青ざめた。
と次の瞬間、踵を返して逃げ出した。
花) 「待て!」
主) 「待ちなさい!」
私たちは通勤の人込みの中、賢明に男の背中を追った。
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男が逃げ込んだのは、朝コーヒーを買い求める客でいっぱいのカフェだった。
犯人) 「近づくな!」
男は一人の女性の首にいきなり腕を巻きつけると、私たちを睨んだ。
花) 「その女性を離せ!」
犯人) 「こいつは人質だ。一歩でも近づいたら、この女を傷つける!」
花) 「強盗、誘拐、詐欺事件の犯人はお前だな」
犯人) 「ふん、ばれたのか。警察もなかなか頭のいい連中だな」
花) 「なぜ被害者の髪を切ったり、子供を誘拐したり、金を騙し取った?」
犯人) 「女がムカつくからだ。無性にムカつくからだ」
主) 「なぜ?理由を教えなさい!」
犯人) 「理由?そーだな、そんなに知りたいなら教えてやる」
「俺はかつて、あの見合い相談所で知り合った女と結婚寸前だった」
「だが挙式前日にそいつは逃げやがったんだ」
主) 「だから女性を傷つけるの?」
犯人) 「そうだ。女は信用ならない。俺を傷つけた報復だ」
男はポケットからハサミを取り出すと、女性の髪に突きつけた。
犯人) 「女は大切にしているモノをことごとく奪ってやれば、傷つくだろ?」
「髪、ネイル、服、子供、金……どれもぶち壊してやるって決めたんだ」
(この犯人、何もわかってない)
(女性にとって大切なものが何なのか、まったくわかってない!)
主) 「そんなことで女性が傷つくとでも思ってんの?」
私は大声で言い放つと、カフェの店員さんからハサミを借りて、自分の髪にハサミをあてた。
主) 「こんなもん、何とも思わない!」
私はハサミを持つ手に力を込めた。
(えいっ!)
ザクッ、ザクッ
花) 「○○…?」
床に長い髪が散らばっていく。
そんな私を犯人が呆然と眺めている。
なぜ、傷ついた顔をしていないのか…とでも言いたげな顔で。
とそのとき、隙をついた一沙が犯人に飛び掛った。
犯人) 「は、離せ!」
もがく犯人の手からハサミを奪い、後ろ手を練り上げた。
カチャッ
手錠を掛けると、犯人は観念したように大人しくなった。
そして私の目の前に一沙が立ち止まった。
花) 「まさか髪を切るとはな」
呆れたような顔をしているけど、目は笑っていた。
一沙が褒めてくれた髪をばっさり切った私。
(こんなとき、なんて言おう?)
主) 「この髪型、似合う?」
花) 「よく似合ってる。今のお前にはこっちのほうが似合ってるかもしれない」
主) 「前の髪型とこっちと、どっちが好き?」
花) 「どっちもだ。いつだって、俺の目の前にいるときのお前が一番いい」
一沙はやさしく微笑むと、短くなった私の髪の毛を指先ですっとすいた。
花) 「それにしてもずいぶん短くなったな。雰囲気ががらっと変わった」
とそのとき、パトカーのサイレン音がして警官がやってきた。
警官) 「お疲れさまです」
花) 「その男を連行してくれ。帰ったら取調べする」
警官) 「はい!」
警官にきびきびと指示をする一沙。
長く複雑だった事件が解決し、私はふと我に戻る。
(事件は解決したけど、一沙、少しでも認めてくれるかな)
(私、一歩ずつでも一沙にふさわしい人になれてるのかな)
大丈夫って信じたい。
もっと自分に自信を持ちたい。
一沙がどう思っているのか、怖いけど知りたい。
でもどんなに一沙の横顔を見ていても、安心材料が見つけられなかった。
to be continued……
まさか主人公ちゃん自ら髪を切ってしまうとは

いよいよ次回は最終話。
スチル1枚しか出てないんだけど…
どーゆうこと!?
はぁ…
あと2時間後には結果が出ます。
ハピエン or ノマエン…
どっちかな!?