目黒虐待死

結愛ちゃんの「叫び」に反響 いたたまれず

 

東京都目黒区のアパートで両親に虐待された末に死亡した船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)は、ひらがなの書き取り帳に「反省文」を残していた。衰弱した小さな体で、何を思い書いたのだろう。その文章が多くの人の心を揺さぶっている。【春増翔太、金森崇之、山本佳孝、土江洋範】

 

事件があったアパートの前に供えられた花や菓子=東京都目黒区で2018年6月9日午前10時23分、西本勝撮影

 

そっと置かれた熊のぬいぐるみの横で、ひまわりの花束が風に揺れる。8日、現場アパートの前には多くの人が訪れ、代わる代わるに手を合わせていた。

 

 その一人、千葉県鎌ケ谷市の会社員、皆川秀典さん(49)はオレンジジュースを供えた。「私にも10歳の長女がいるが、早朝に起きて反省文を書いた結愛ちゃんを思うといたたまれない。私たち大人はいったい何ができたのだろうと思う」。そうつぶやいた。

 

 事件は3月2日、結愛ちゃんが搬送先の病院で死亡して発覚した。今月6日に保護責任者遺棄致死容疑で父親の雄大(33)、母親の優里(25)の両容疑者を逮捕した警視庁捜査1課の幹部は捜査経過を説明した際、声を詰まらせながら「反省文」を読み上げた。

 

 大学ノートには悲痛な叫びが並んでいた。4歳の息子と1歳の娘を育てる西東京市の主婦(34)は「遊ぶのが子どもの仕事なのに、『あそばない』という記述はショックだった。子どもらしく生きられればよかったのに」と声を落とす。

 

 容疑者を糾弾するだけでは消えない、「心のとげ」を感じた人もいた。2人の子どもがいるという東京都品川区の主婦(42)は「子育てをしていると、孤立して心の余裕がなくなる。言うことを聞かない子どもに手をあげてしまうことがある」と明かした。

 

 ツイッターは事件の書き込みであふれている。5児の父でもあるタレントのつるの剛士さんは「覚えたてのひらがなでなぜこんな悲痛な想いを綴(つづ)らなきゃならないのか。一番の安全地帯であるはずの親に」とツイート。「守ってあげることができなかった我々の方が本当にごめんなさい。そんな想(おも)いに駆られて胸が潰れそう」と吐露した。

 

 1歳5カ月の娘を育てるエッセイストの犬山紙子さんは、ツイッターで「#児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません」というハッシュタグ(検索の目印)を作った。このハッシュタグを使ったツイートは既に5万件以上が拡散された。犬山さんは「政治家に取り上げてほしい。大人にしか子どもは守れない。多くの人に行動してほしい」と話す。

 

 こうした声に押されるように、東京都の小池百合子知事は8日の記者会見で児童相談所の体制強化を表明。加藤勝信厚生労働相も児相の対応について、省内の専門委員会で検証する方針を示した。

 

 「じぶんからきょうよりか もっともっとあしたはできるようにするから もうおねがいゆるしてゆるしてください」

 

 結愛ちゃんの言葉が、私たちを揺さぶっている。

結愛ちゃんが書き取りノートに書いた文章の一部

 <日付不明>

 ママ、もうパパとママにいわれなくてもしっかりと じぶんからきょうよりか もっともっとあしたはできるようにするから もうおねがいゆるしてゆるしてください おねがいします ほんとうにもうおなじことしません ゆるして

 

 <日付不明>

 きのう ぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす

 これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめるので もうぜったい ぜったいやらないからね わかったね ぜったいのぜったいおやくそく あしたのあさは きょうみたいにやるんじゃなくて もうあしたは ぜったいやるんだぞとおもっていっしょうけんめいやって パパとママにみせるぞというきもちで やるぞ