2018年4月19日付け週プレNEWS『若い世代が安倍政権を支持する“雇用改善”もアベノミクスとは無関係!? そもそも経済は「全然潤ってない」』を2回にに分けてお届けします。
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働き方改革法案に盛り込まれていた裁量労働制に関する「不適切なデータ」、森友学園への国有地売却問題をめぐる「決済文書改ざん」、そして自衛隊の「日報隠蔽」──今、安倍政権への信頼が大きく揺らいでいる。
安倍政権が高い支持率を維持してきた最大の理由はアベノミクスによる経済成長と言われているが、政権の命綱であるこの経済政策の成果も「都合のいいデータ」によって築かれた砂上の楼閣だったとしたら──。
今、話題の一冊『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)の著者・明石平氏は「アベノミクスは大失敗だった」と断言。同書では政府や国際機関が発表した公式データを用いながら、アベノミクスの成果が幻想に過ぎないことを看破している。
なぜ、大失敗だったのか? 菅義偉官房長官への厳しい追及で一躍その名が知られた東京新聞社会部記者・望月衣塑子(いそこ)氏との対談で語る――。
前回記事では、「実質賃金が下がった理由」「実質GDP成長率は民主党政権時代の3分の1」など、アベノミクスの実態を明かしたが、この第2回では、若い世代が安倍政権を支持する理由となっている「雇用の改善」の裏側を暴く──。
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望月 株価上昇はアベノミクスの最もわかりやすい成果とされています。「異次元金融緩和」でお金が市場にジャブジャブ余っているから上昇しているのかな、という理解でしたが、そうではなく株価を支えていたのは公的資金の投入だった。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する巨額の年金資金が株式市場に注ぎ込まれていたんですね。
それと、日銀によるETF(上場投資信託)の大規模な購入。今の株高が「官製相場」だということ、そしてこれを止めたら、おそらく株価は暴落するだろうということもこの本でよくわかりました。安倍政権を支えている経団連の人たちは、このようなあからさまな株価維持の実態をわかっていると思いますか?
明石 当然、わかっているでしょうね。経済について一定以上のリテラシーのある人ならば、アベノミクスの実態を知っているはず。でも、経団連は輸出関連の製造業など円安で恩恵を受ける人たちが中心だから、彼らにとってアベノミクスはありがたい政策なので支持する理由があるんです。
望月 一方、若い世代が自民党を支持する理由は、やはり「雇用」だと思います。政府は有効求人倍率の高さをアピールしているし、実際、就職は売り手市場になっている。若い人たちは改憲などイデオロギーに関する問題よりも、自分たちの仕事に関する経済政策を重視している。でも、明石さんは「雇用の改善もアベノミクスとは関係ない」と指摘していますよね。
明石 関係ないですね。現実には民主党政権時代から雇用状況は改善されてきています。その理由として、まず挙げられるのは「生産年齢人口の減少」です。要するに人手が足りない。特に新卒の人にとっては、ここ数年で団塊世代がゴソッと現役から抜けたわけですから、当然、椅子は空くわけです。あとは医療・福祉分野がすごく伸びていて、4年間で100万人以上増えています。
それ以外で何が増えているかといえば、小売とか飲食です。これらは国内で儲けているわけですから、アベノミクスによる円安は全然関係ない。むしろ円安による輸入食材の値上がり分のしわ寄せが、労働環境や賃金に反映される危険性すらあると思います。
もうひとつは、雇用構造の転換です。正社員はなるべく雇わずパート・アルバイトで賄(まかな)う。医療・福祉も小売も飲食も、みんな非正規雇用で回していくのが一般化しているので、当然、数字の上では「有効求人倍率」も「有効求人数」も上昇するよね、という話です。
アベノミクスによる円安の恩恵を受けるのは製造業だが、増えたのは4年間で18万人。医療・福祉が101万人増加したのは、高齢化が進み介護需要が急増したため。アベノミクス第2の矢は公共事業だったが、建設業は9万人減(『アベノミクスによろしく』より)