「すべてを除染しない限り…」

「南相馬市役所の屋上は2014年に除染されていました。しかし、昨年採取したダストから、こんなに高い数値が出たということは、除染後、また、放射性粒子が舞い戻ってきた可能性があることを証明しています。

つまり、除染の効果はほとんどなかったと疑われるのです。除染したところで、草木が風雨にさらされれば、放射性粒子が舞い戻ってきます。草取りをしても、翌年、また草が生えてくるのと同じです」

 

ガンダーセン氏は、徹底的な除染が行われていなかった、というのだ。

 

「今、福島第一原発からは、新たな放射性物質はそれほど放出されていないと思います。しかし、すでに放出された放射性物質が、今も存在しているのです。政府は目につくような高速道路の両脇10~20メートルや家屋は除染していますが、山森などは除染しようとしていません。

お金がかかるからでしょう。ですが、県のすべてを除染しない限り、放射性物質はこれからも残存し続け、除染しても再汚染される状況が少なくとも100年は続くことになると思います」

 

ガンダーセン氏は昨年の調査時、99.98%の放射性粒子をフィルタリングできるマスクを装着していたが、使用したマスクのフィルターを測定したところ、17bqの放射線値を示したという。

一方、日本で主に装着されている紙マスクは約10%しかフィルタリングできない。そのため、紙マスクを装着している人はさらに多くの放射性粒子を吸引している可能性がある。

 

またガンダーセン氏は、東京の経済産業省の前の通りの土壌も採取したが、その数値は、3000bq/kgと全サンプルの中央値に近い値だった。しかし、建物の入口近くの花壇から採取した土壌は7000bq/kgと高い数値を示した。

放射能に関する議論は「肯定派」「否定派」の間で、非常に激しいものになりがちだ。彼らの検査結果を否定する人たちもいるだろう。しかしながら一方で、この指摘を真摯に精査し、政府あるいは関係機関がもう一度精緻な検査を行う必要があるのではないか。

 

ガンダーセン氏は、この9月、日本を訪ね、日本の科学者やボランティアのチームとともに、さらに500~600のサンプル採取にあたる予定だ。