2016年11月22日発行の『週刊プレイボーイ』48号の記事を2回に分けておとどけします。

 

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農水大臣の山田正彦氏。「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の弁護団を務める

 

ドナルド・トランプ新大統領の誕生で発効の見込みはなくなったのに、TPP(環太平洋パートナーシップ)批准を強硬に推し進める安倍政権。一体、なぜ?

 

今回のアメリカ大統領選挙では、TPPからの離脱を公約に掲げていた共和党候補のトランプはもちろん、民主党のヒラリー・クリントンも基本的に「TPP反対」。つまり選挙結果がどちらに転んでも、アメリカがTPP合意を批准する可能性は低いと思われていた。

ちなみに今年2月、ニュージーランドのオークランドで、参加12ヵ国による署名式が行なわれたTPP協定だが、その発効には、最低でも「12ヵ国のGDPの85%以上を占める6ヵ国の批准が必要」という条件がある。

 

そしてアメリカのGDPは、参加国全体の約60%。仮にこのままアメリカがTPPを批准しなければ、現在のTPP協定は発効できず、確かに「死んだも同然」なのだ。

 

ところが、安倍政権はTPP合意の「年内批准」を今の国会の最重要課題のひとつと位置づけ、是が非でもそれを実現しようと、強気の国会運営を続けてきた。

 

その間、山本有二農水大臣の2度にわたる失言と、その進退をめぐる与野党の攻防でスッタモンダがあったが、くしくもトランプの当選が決まった翌日の11月10日に、与党は事実上の強行採決(民進党、自由党、社民党が退席)をし、TPP関連法案は衆議院本会議を通過した。

TPP交渉をウオッチし続けている市民団体PARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子氏の元にも、海外の関係者や友人から「日本政府はトランプがTPP離脱を公約にしていることを知らないの?」とか「なぜ日本は批准を急いでいるのか意味がわからない」といった声が連日のように殺到し、返答に困っているという。

 

安倍首相自ら「TPPの発効が非常に厳しい状況にあることは認識している」と言っているのに、政府や与党がいまだにTPP批准に固執し続けている理由は何なのか?