「民の声新聞」2016年9月18日配信の記事。私は「3・11甲状腺がん子ども基金」の設立シンポジウムを聴きにいった。菅谷氏は松本C市長との公職にある。菅谷市長は自ら安倍政権の原発被災者への対策を批判することで、報復が、仕返しとして国から松本市への交付金が減らされることを極度におびえていた。安倍政権は言いなりにならない沖縄県、新潟県への交付金大幅カットという報復をおこなった。記事を3回に分けてお届けする。

 

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【3・11甲状腺がん子ども基金】菅谷昭市長が指摘するこの国の誤り。「健康調査の充実を」「長期保養も必要」~基金はまず患者の経済的支援へ

 
「3・11甲状腺がん子ども基金」の設立シンポジウムが17日午後、都内で開かれ、基金の特別顧問である長野県松本市長の菅谷昭さんが基調講演。チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシ共和国で甲状腺治療に従事した経験から「甲状腺ガンはもちろん、他の健康障害も長期的な観察が必要だ」と訴えた。また、決して財政が潤沢でないベラルーシが国家予算で子どもたちの長期保養に取り組んでいるのに対し、日本は「政府が無関心」、「これが安倍総理の言う『被災者に寄り添う』なのか」などと批判。「やっとここまで来た。重要な基金が設立された」と語った。基金は寄付を募りながら、11月以降、小児甲状腺ガン患者への療養費の給付などに取り組んでいく。


【甲状腺ガンばかりでない健康被害】
「福島の事故は、たった5年、わずか5年が経過したに過ぎないのです」
チェルノブイリ原発事故による人体や環境への影響は、30年経過した今も収束したとは言えず、長期にわたって注意深く経過観察をしていく必要がある。菅谷市長はその前提に立った上で「福島で見つかっている甲状腺ガンの原因など、現時点では特定出来ない。『放射線の影響ではない』ではなく『分からない』と言うべきだ。今すぐ結論を出すことは控えた方がいい。スクリーニング効果だという指摘があるが、ではなぜ7割以上がリンパ節や肺などに転移しているのか。最近は逆の方向に行く動きもあるようだが、国や福島県は定期検査にもっと力を注いで、疫学的事実を集積していくことが必要だ」と語り、福島県や福島県立医大による甲状腺検査「縮小」の動きをけん制した。
日本では甲状腺ガンばかりが注目されるが、チェルノブイリ原発事故後の健康被害として「免疫機能の低下」、「造血器障害」、「集中力低下」、「疲れやすい」などが報告されている。6歳から17歳までの定期健診では、眼科や歯科検診、血液、尿検査も実施されている。ゴメリ州の産科医は「ぜんそくや皮膚疾患などのアレルギー疾患、胎児異常の増加」を指摘しているという。
ベラルーシでは、汚染地域に暮らす子どもたちを対象に年1回、1カ月間にわたる非汚染地での長期保養が実施されている。費用は全て国家予算で賄われ、保護者の負担は無い。今年7月、地元の男性医師に「日本ではなぜ、国家的保養プロジェクトを実施していないのか」と尋ねられ、答えに窮したという。
「向こうでは、保養を非常に重視している。汚染地で生活していると、注意していても汚染された食べ物を食べてしまう。でも、3週間から1カ月、きれいな土地で生活すると排出される。精神的にも良い。私も福島第一原発事故当初から保養は長期でやるべきだと言ってきた」と菅谷市長。松本市では2011年8月、「信州まつもとこどもキャンプ」として飯舘村の子どもたちを受け入れた。現在は「NPO法人まつもと子ども留学基金」をバックアップしている。菅谷市長は「経済的に厳しく、原発が元々無いベラルーシでさえ無料で長期保養を実施している。日本も国の責任を果たすべきだ。国民がムーブメントを起こすべきだ」と訴えた。
「公人だから物を言うのがつらい」、「松本市は予算を減らされるかも」などと笑いも誘った菅谷市長だったが、国の帰還政策はきっぱりと批判した。
「一定の年齢以上の方が故郷に戻りたいという気持ちは分かる。しかし、今なお原子力緊急事態宣言は解除されていない。それなのに海外で『アンダーコントロール』と言ったり、若者や子どもに『大丈夫だから帰還しなさい』と言ったりする。矛盾している。大丈夫なら年20mSvでなく年1mSvに戻すべきだ」

 

       
甲状腺ガンを含む幅広い健康調査の充実、国家予算での長期保養施策の必要性を訴えた菅谷昭・松本市長