7)加藤さんの優しさを示すエピソードだ。加藤さんは外国に留学している売れない、貧しい画家と知り合った。加藤さんは彼に画家の才能を見出していたが、絵は売れず生活は貧しかった。加藤さんはその画家を経済的に支援したいと考えた。そこで加藤さん画家の住む近所のパン屋に金を送り、毎週1回パンを届けさせた。加藤さんは直接お金で援助したら画材に使ってしまうだろうと考えたからだ。この画家は池田満寿夫だろうと言われているが、ともにいまは亡くなり事実を確認することはできない。

 



 


 

 
横浜・青葉台暮らし-WIEN2  
 
2011年12月に大改装されたウイーン西駅(WESTBHANHOF)。
 
ドイツ、フランスからの国際列車はウイーン西駅に着く。
 


8) 加藤さんの初めての結婚相手はオーストリア女性であったことは前回書いた。私はこの6月にオーストリア旅行に行った。ある1日をリンツからウイーンまで列車で日帰り旅行をした。ウイーンは10年ちかくまえに訪れているので2回目の訪問となった。加藤さんは「羊の歌」にオーストリアの女性に会うためにパリからウイーンまで列車で行ったと書いている。私はリンツーウイーン間の列車の車窓からの景色を見ながら、加藤さんも60年も前にこの景色を見たのかと思い、深い感慨がこみ上げてきた。ヨーロッパの都市の街並みは2,30年では変わらない。田舎、田園の風景はそれ以上に変わらないだろう。私は車窓の美しい景色を見ながら、私の考え方、生き方に決定的な影響を与えた一人の人間のことをおもいだしていた。

 


 

 
横浜・青葉台暮らし-WIEN3  
 
リンツーウイーン間の車窓から見た夕日だ。まもなくリンツ駅に着く。
 
写真は今年6月のオーストリア旅行から。全て2012年6月4日撮影。