私がもう30年以上、欠かさずといっていいほど食べ続けている食材が、納豆である。納豆はシンプルにご飯に合わせても、オムレツにしても、パスタに混ぜても、どんな食べ方でも美味しいが、私は決まって同じ食べ方で食べる。
それは「納豆お湯かけごはん」。
お椀にごはんを盛り付け、納豆をかけ、そしてお湯をかけて食べる。周りにエッと驚かれることにむしろ驚く。ずっと小さいころから、「納豆はこう食べるもの」だと思い込んでいたからだ。
これを教えてくれたのは亡くなった母方の祖父で、山形県で生涯暮らした祖父は大の納豆好き。必ず食卓には納豆が並んでいたし、これまた山形名物の納豆汁を食べ、正月には納豆餅をみんなに振舞ってくれた。
その祖父はいつもエネルギッシュで年を重ねても好奇心旺盛で頭の回転が早く、小さな会社の会長職を勤め、生涯現役で働いていた。
世界ではじめて大気(空気)に感謝するために大気を神様として祀った「空気神社」を発案したメンバーのひとりでもあって、いつも地元の活性化のために奮闘していた。
「納豆のおかげで元気」といってもいいほどの人だった。
そんな祖父が、晩年、唯一食べられなくなったのが納豆だった。
治療のために飲む薬との飲み合わせが悪いとかで、大好きな納豆を食べられない祖父を見るのは不憫だったし、なぜ他のものが禁止にならず、よりによって納豆なのだろうと、人体というか、運命の不可思議な流れにちょっぴり悲しくなったりもした。
それでも祖父の最期は、たくさんの人に葬式にも参列してもらい、いろいろと総括してもたくさんの人との出会いや仕事、チャレンジに恵まれたいい人生だったと思う。
納豆のことは残念だったけれど、あれだけ食べていたのだから、もしかしたら私が分かっていなかっただけで、祖父は満足だったのかもしれない。
納豆お湯かけごはんは、私のソウルフードだし、文字通り、祖父の魂(ソウル)を感じるごはんでもある。山形のお墓まいりにはなかなか行けないけれども、毎日、祖父を思い出し、彼とつながる時間があるのは確かだ。
きっと、そんな時間を祖父も喜んでくれていると思う。
マドリードの夕焼け。
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