盗まれたフェルメール 朽木ゆり子 | ちわ☆わんつーmemory 

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日々の忘れたくないこと

フェルメール43年の生涯で描かれた作品は一説には32点、多いと言われる説でも36点

  〈赤い帽子の女〉〈フルートを持つ女〉〈聖女プラクセデス〉〈ダイアナとニンフたち〉
―フェルメール作品で四点はフェルメール作品かどうか、判定が灰色となっている


1990年3月18日 アメリカ、ボストンのガードナー美術館に警官を装った強盗が入り、盗まれた作品のなかにフェルメールの〈合奏〉がありました。
それから十数年。作品は盗まれたまま、ガードナー婦人の遺言を守っている美術館の展示室には空っぽの額縁が飾ってあるそうです。
盗まれたフェルメール (新潮選書)/朽木 ゆり子
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東パキスタン難民を支援したり、獄中のIRAテロリストを故郷に移動させるためにフェルメールの絵を盗む。自分の刑期の短縮交渉のために、手下にレンブラントの絵を盗ませる。武器・弾薬と交換するために名画を盗む…。絵画泥棒が絵を盗む動機は私たちの想像を遙かに超えている。犯罪者にとって絵はどんな価値を持っているのだろうか?そう考えることで、私たちの絵を見る眼も変わる。 年間被害総額は10億ドル以上、盗難美術品が戻る確率はたったの一割程度-。美術品盗難史上においてかなりのツワモノであるフェルメールに焦点をしぼった、美術品の盗難をめぐる知的興奮の書。(内容紹介より)


 


「イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館とは…」
そこからの解説で始まる本書
Bbkamuraミュージアムで開催中、フェルメール〈地理学者〉を観る前に少しでもフェルメールについて知ろうと思って選んだ作品ですが、フェルメールの解説でなく絵画の盗難について細かく解説された本でした。

美術品泥棒というと私にとっては青池保子さんのコミックエロイカですが
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エロイカより愛をこめて (1) (プリンセスコミックスデラックス)/青池 保子
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そんなかっこいいのはフィクションの世界のみ



美術品窃盗の動機には
①個人で所有する
②コレクターからの委嘱
③故買品を扱う画商に売る
④オークション会社に委託
⑤思惑だけで盗む
⑥投資
⑦買い戻し金、あるいは報奨金を得る
⑧政治的理由

このような項目が羅列され、それぞれに説明がされています。
美術品の盗難をこのように細かく解説されると奥が深くて面食らう。
⑦買い戻し金
これについては保険会社が保険金を払うより、安い金額で買い戻せるために窃盗団、泥棒の交渉に応じることが多いので、よく起こることらしいです。
それでも盗まれた作品が戻ってくるのは、有名な画家のよく知られた作品で50%
盗まれる作品のほとんどは無名の平凡な作品で盗品の10%しか戻らず、狙われやすいのは人の記憶に残りにくい風景画だそうです。


1974年と1986年の2度にわたって盗難に合い、無事戻ったフェルメール作品〈手紙を書く女と召使い〉
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今年の12月23日からBnkamuraミュージアムで「フェルメールからのラブレーター展」
で展示予定になっています。
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フェルメールからのラブレター展サイト
京都美術館では今年6月25日から10月16日まで

1974年の4月にダブリン郊外、ラスボロー・ハウスから盗まれた
〈手紙を書く女と召使い〉
同じ1974年2月23日ロンドンの美術館ケンウッド・ハウスから盗まれた〈ギターを弾く女〉

この2枚の絵画の不思議な共通点
それは1675年フェルメールが死んだ時、借金のカタとしてフェルメールの妻カタリーナ・ボルネスがパン屋へ渡した絵だった。
子沢山でフェルメール家10人分の2~3年分のパン代のカタだったようです。
パン屋は借金を完済すれば絵を返すと言ったらしいが、借金は返せなかったようで、2枚の絵はそれぞれ
〈ギターを弾く女〉が1696年
〈手紙を書く女と召使い〉が1730年に競売にかけられたのが確認できている。


⑧政治的理由1974年
この頃IRAの活動が活発な時期だったようで、
〈ギターを弾く女〉の犯人と名乗る人物からロンドンの自動車爆弾犯人のプライス姉妹をアイルランドへ移送させるように要求がある。
〈手紙を書く女と召使い〉窃盗事件の女性テロリスト
ブリジット・ローズ・ダグデールほか数人のIRA活動家が〈手紙を書く女と召使い〉など19点のラスボロー・ハウス窃盗事件に関与したことがわかったが、逮捕されたのはこの女性テロリストのみ。
やがてこの逮捕後5月に
〈ギターを弾く女〉も犯人から返された。
この事件についての解説が詳細に描かれています。
三年前にはブラッセルでフェルメールの〈恋文〉が盗まれた事件もあり、フェルメールはもっとも窃盗の対象になりやすい画家として有名になってしまったようです。
点数が少なくて稀少価値があり、サイズも小さくて運びやすい為に。

戻った
〈手紙を書く女と召使い〉は盗まれた時に受けた傷を修復する過程で新しい発見がありました。
加筆された部分=競売時に付けられたと思われる番号=を取り除き、オリジナルに近づける過程で、手紙を書く女性のテーブルの前に棒状の封蝋と溶けた封蝋の一部が描かれていることがわかったのです。
そうなるとこの部分で絵の解釈が変わってくるそうです。
床に落ちている手紙が、手紙を書いている女性によって書かれたものなのか?それとも相手から受け取った手紙なのか?
手紙を書いたけど、気に入らないから書きなおしているのか?受け取った手紙が彼女を怒らすような手紙で投げ捨てたのか?
どちらなのでしょう…真相は?

⑤思惑だけで盗む1986年
またも
〈手紙を書く女と召使い〉はアイルランドのラスボロー・ハウスから盗み出されてしまいます。
1974年の盗難後ラスボロー・ハウスでは警備体制が強化され赤外線警報装置が備えられました。
持ち主のバイト卿は盗難保険を解約しました。
保険が逆に盗みを奨励することになると考えたからです。
前回の盗難の後、美術品コレクションの中核を占める作品をナショナル・ギャラリーに寄贈する手続きを進めている間にこの事件は起こりました。
犯人は当時37歳のマーティン・カーヒル率いる合計12名の窃盗団
しかし、カーヒルは窃盗の知識は豊富だが、美術品の処理については知識が乏しく、盗んだ作品を売りさばく方法に失敗したため、最終的には犯罪の縄張りで対立していたIRAに殺害されました。
フェルメールの作品が闇マーケットで売りに出されているとの情報を得たベルギー警察はスコットランド・ヤード、アイルランド国家警察と連携して取り戻すことができました。
しかしルーベンスの〈騎士〉など未だに行方不明の作品もあるようです。


最初の事件から19年後、この事件でも修復をきっかけにフェルメール作品に発見がありました。
手紙を書いている女性の左の目に、針でつついたような穴が空いていることが発見されたのです。
フェルメール作品は室内画が多く、どのような透視図法を採用していたか?
他のフェルメール作品12点にも同じような穴があることがわかり、この点が遠近法におけるすべての線が収斂する消失点ではないかとの仮説が立ちました。
フェルメールはカメラ・オプスークラを利用したという透視図法の仮説が何人もの研究者によって発表されてきたのですが、もっと原始的な針と糸を使ったという仮説がここで発表されたのです。



1980年 ガードナー美術館とよく似たハイド美術館での窃盗事件。
ハイド婦人はガードナー婦人とも親交があり、ガードナー美術館にあこがれて作ったハイド美術館にも泥棒が入りフェルメール作品と思われる盗難事件が起きたのですが、この作品が贋作だったのです。
カタログには「ヤン・フェルメールのスタイルで」と作者名は限定しておらず
さらに「恐らくはハン・ファン・メーヘレンの手による」と追記がありました。
作者はハン・ファン・メーヘレン
多くのフェルメール専門家がだまされた贋作画家でした。
彼がフェルメールの贋作を描くようになったのは「自分の作品を認めない評論家を見返すため」と言われているそうです。


 ハン・ファン・メーヘレン=ナチスのゲーリング元帥を騙してフェルメール作品として自分の描いた作品を売ったという有名な事件があった―

 

最後にガードナー美術館の窃盗犯は?怪しい人物。自分で怪しいとにおわせた人物…
この本が書かれたのは2000年
それから11年 まだ盗まれた作品は戻っていません。

美術品の窃盗は誘拐事件と似ています。直接の人的被害は少ないですが、人質をとって取引をする。

美術品は時には富と権力の象徴として嫌われることもあります。



絵を見ることで慰められたり、感嘆したり。

その名画にあった変遷も知ると、また見るときの楽しみが増えると思います。

〈手紙を書く女と召使い〉
鑑賞できるといいな~




百聞は一見に如かず

見て初めてわかるという事項もたくさんあります。

今回の災害も報道されている状況を見て、すさまじさに言葉も出てこない


石原都知事が言葉をつまらせて福島原発から戻った消防隊員へ

「ありがとう」と言っていた映像にこちらも涙が浮かびます。

命がけで作業されているいるたくさんの方々、救援活動されている皆様ありがとうございます。


はやく日本が落ち着いてみんながゆっくり好きなことができる日が来ますように~




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