彼がきた

わたしはただじっとしていた

終わるまでずっとにんぎょうのようにじっとしていた

水の音をきいていた

暗い 夜はきらい

私は虫けらじゃない


だけど虫のほうがきっとまし


けだるい
一日じゅうへやのすみで横になって目を閉じていた。

すべてが忘れられる。あったかい

目をひらくと本当がもどってくる

みじめな自分。

なにもできない、うすよごれたみじめな自分。
冷たい床

聞こえてくるのは小さな水滴の音だけ

今日も朝がきた。

たかい天窓から日がふりそそぐ。まぶしい。

手を伸ばしても、まどには手がとどかない

きっとあしたも朝がくる

最後にみたのは公園での記憶。
そこで私の想い出は切れている。
パパもママも幼稚園に通っていた弟も。

もうどこにもいない。

私だけ。この薄暗い地下室にいるのは私だけ。

目の前がまっくらになって気がついたらここにいた。さむい。