よくスーパーなどで売っている比較的安価なコーヒー豆はコモディティ豆と言って生産国の国中から集められた謂わば出所不明の豆になります。ニューヨークで売り買いされる有名産地の人気豆などと違いその国際取引を行う場所もロンドンと決まっており、ここではブラジルの「サントスNo.2」、インドネシアの「マンデリンG1」、エチオピアの「モカG4」、コロンビアの「コロンビア・スプレモ」などあまり品質が良いとは言い難い「その他大勢」に分類されるコーヒー豆がいつでもお安く買えることになっております。安くて質が良くないとは言っても一般のコーヒー専門店でもブレンドやアイスコーヒー用に使用するお店も多く、結構ニーズはあるのです。しかし、実はここでも異変が起きていて安いはずの一般豆なのにスペシャルティとあまり変わらないお値段になってしまっていたり、そもそも品物自体が無いという状態だったり致します。長いことこの仕事をやっておりますがこんなことは初めてであります。特に顕著なのが値上がりの部分で言えばマンデリンとロブスタで一昔前の高級豆と見紛うお値段ですし、エチオピア・モカに至っては商品自体が日本に入って来ていない感があります。余りに入荷が細いものだからどの商社も年中品切れでたまに少し入って来ても販売リストに載ったそばから完売してしまいます。どうしても欲しければスペシャルティを買えばいいのですけどこちらも入荷量が少ない上に価格が1年前の2倍近くになってしまっているようなものすらあります。心配なのは各商社からここまで高騰すると輸入しても売れずに在庫が嵩むだけなので仕入を断念するというお話があちこちで聞かれることです。このままの為替レートだともう比較的高級な豆は日本に輸入されて来ない可能性すら出始めております。三重珈琲でもラインアップしているモカ「イルガチェフェ・アベベ」と「グジ・シャキッソ」が共に在庫薄のため、出入りの商社担当に打診しておりましたが1社を除いて手持ちが無い状態でその1社も軒並み2割ほどは値上げになり、しかも在庫がどれもタイトになっていて販売リストで見つけて手配にかかると既に売り切れという為体です。幸い少し前にこれを見越して大手商社がリリースした在庫調整品を購入予約しておりましたので、取りあえず明日「イルガチェフェ・イディド」が入荷しますし、別に「イルガチェフェ・コチャレ」という商品も取り置きしてありますが、秋口以降の中米の新穀も含めてどこまで値上がりしてどれだけの数量が輸入されてくるのか不安は尽きません。ある商社さんからのニュークロップ入荷案内にも「この価格では売れ残るのが確実なので本当は買いたくないのですがコーヒー輸入商社として商品を入れないワケにも行かず...」などという愚痴っぽい記述が記載されておりました。コーヒーだけじゃなくていろんな意味で日本は今分岐点に立たされているようですね。