当たり前のように春を迎えて 貴方と歩いた桜並木道
たくさんの桜の花が 2人を見下ろし 薄桃色に染める
私は いつものように貴方の腕にもたれて
「今年も 綺麗だね」
そう呟いた
貴方は 穏やかな微笑みを浮かべ 頷いていたね
来年も 再来年も
5年後も 10年後も
ずっとずっと
2人 当たり前のように
この桜並木を歩く事ができると思っていたの
早くも散り始めた
桜の花びらが
ひらりひらり
風に乗り あてもなく
はらりはらり
2人歩く道に舞い降りていた…
貴方と出逢った あの頃の私は いつも俯いて 道に落ちてる石ころばかり見ていた
夢みて憧れて
この街に来たけれど
泣き事を言う間もなく 忙しく過ぎてゆく毎日に うんざりしていた
慣れない街
慣れない人々
慣れない仕事…
ため息をつく事が癖になりいつも 俯いていた
やがて 憧れていたこの街すらも色を失い この先続く毎日に 心沈んでいた
そんな時
貴方は突然 私の前に現れたね
いつもの電車に乗り いつもの様に改札を抜けた時
少し はにかんだ笑顔を浮かべ 貴方は私に話しかけて来た
まるでドラマの中の出来事のように 貴方は私の日常に登場したの
「毎朝 同じ電車に乗っているんです。同じ駅で降りる君の事が気になって いつの間にか 君を探す様になってました。」
誠実そうな瞳を 真っ直ぐに私に向けて話す貴方が
とても眩しかった…
それから 少しずつ
色んな事を話すようになって 貴方とお付き合いをするようになったわ
どんな時も 気取らない貴方といると 本当に寛いだ時間を過ごせるようになっていたの
手を繋いで歩いた散歩道
色を失っていた街が キラキラと鮮やかに 色を取り戻していた
貴方と出逢えた事に
本当に 心から 感謝したいと思った…
貴方と出逢うために
生まれてきたのだと
ただ ただ
素直に 感じていた…
葉桜になる頃
家業を継ぐために
田舎に帰ると
そう貴方は突然私に告げた
私は何を言っているのか
直ぐには分からず
ただ呆然としていたの…
辛そうな表情を浮かべて
視線を反らす貴方の顔をじっと見つめる事しか出来なかった…
キリキリと重い沈黙のあと2人はため息と共に抱きあった
目の前に迫る
「さよなら」
から 離れたくて 逃げたくて 2人いつまでも抱きあっていた
2人が出した答えは 別れではなく 「遠距離恋愛」
北国に戻る貴方と
ここに残る私…
夢を叶えるために
この街に出てきた私は 貴方に付いていく事が出来なかった
独りきりの休日
貴方と訪れた公園に佇み
寂しくて 寂しくて
身体が震える位 寂しくて泣き出してしまった事もあった
暮れる夕陽の美しさに目を奪われ 貴方がここにいてくれたら分かち合えただろうにと ため息をついた
頑張って頑張って
ようやく受かった試験
貴方の誇らしげな笑顔が目に浮かんだ
月を見上げては
貴方を思い
朝陽を浴びては
貴方を思っていたの…
遠く離れていても
空は繋がっていて
貴方は 私に微笑みかけてくれていると 分かっていたから
貴方が 私の傍からいなくなって やがてまた 春がやってきた
独り歩く 桜並木道
今年も 涙が出る位美しい
寂しさが込み上げてくるけど 私には まだ見ぬ桜の花が心の支えとなっていた…
5月
私は貴方と2人
初めて見る桜並木道を歩いている
北国の遅い春
やっと咲いた 桜の花
私はまた 貴方の腕にもたれながら
「綺麗だね」
そう呟いた
貴方は 優しく頷きながら
私を抱き締めた…
貴方と出逢うため
私は 生まれてきたの……
※このお話は フィクションです